dancept2の日記

あやしうこそものぐるほしけれ

「私はこの世に忘れられ」大全集(?)(その一)


男の女々しさ——というのは形容矛盾になるのか、それ以前にポリコレ的に不味いことになりますか、それに女々しいで片付けられては世のマーラー好きにもどつかれますわね。やはりとくに終盤 "Und ruh' in einem stillen Gebiet!—静かなる地に安らいでいる—" からの音楽はしみます。しかし作者が男性という先入観もあってか男声のほうが男の孤独感といいますか、あるいは諦観でしょうか、より引き立つような気がしていたわけでございます。交響曲にフィルアップされることもあってけっこう手元にもあるものの、ことにバーンスタインが伴奏を付けた男声ふたつの録音でいいやという。

ひとことでいうなら<慟哭>でしょうか思いのまま独走するバーンスタインを前にフィッシャー=ディースカウが、それを押し返すようなかんじがよいんですな。この組み合わせでなければ——なんでもそうだと云われればそうですが——成し得ない演奏でしょう。最後の "In meinem Lieben—私の愛の中で—" 直前の不協和音の炸裂は強烈。この崩壊感。アルペジオのはずが…やり過ぎ?、イイんです。

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トーマス・ハンプソンとのオケ伴奏では、その次の "in meinem Lied!—私の歌の中で—" 直前——第五「アダージェット」でも使われている下降音型終わり部分——の響きの不気味さが印象的でした *1

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しかしながら、たまたまクリスティアーネ・カルクの録音を YouTube で耳にして驚嘆。なにをいまさらということでしょうけれど、すごい歌い手さんですね。整いすぎて面白味がないなどというのも憚られ *2

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はい、男声がよいなどといっておきながらソプラノ歌手にやられてしまうのだからいい加減なものです。

そんなんで、ちょっといろいろ聴いてみたいとおもい YouTube で検索してみた。これはもういくらでも出てくる訳で *3 、マルタ・メードルやグラツィエラ・シュッティの音源なども発見、たちまちブラウザーのタブがいっぱいに。訳わからない上にメモリの負荷もすごい。そこで非公開のブログ記事に張り付けてみていたのだが、せっかくなのでそれをもとに記事にしてみた。

全動画チェックするヒマなかたもおられまいが、歌手たちのショーピースになったりもするでしょうか。しかし、こうなるとなにやら集めるのが目的化。いち歌手一本にしなかったのも敗因ですが(FD やコジェナーなどやたらある)ここで絞ってくのもたいへん。おかげでちゃんと聴けてないという。暫くはもういいやというかんじですが、のちほど改めて聴くことにいたしましょう(苦笑)。

そんな調子でちびちびと追加していた次第だが、もうキリが無いのでここいらで打ち切り。ガランチャよりあとの世代はほとんど名前も知らない(汗)。歌手としては会場の大きさ・伴奏の違いを無視した上に、セッションとライヴ中継の録音を並べられてはたまらんというのはあるもしれない。初めて聴いた演奏では、ライヴではユリアーネ・バンゼ、ノーマン、トロヤノス、シュターダーあたり、セッションではアリソン・ブラウナー、ゾッフェル、フォン・シュターデなど印象に残りました。

下記いきなりの番外編のような体裁で掲載し、同一音源が複数ある場合は(音声の出力レベルが抑えられてるようではあるが)"Auto-generated by YouTube" のトピック動画を優先した。データは説明欄に記載があれば基本的には転記、それ以外はネットで少ししらべたものの *6 のような塩梅で、最後に書き足している演奏時間ともどもあくまでも参考ということで。

しかし、トピック動画にはたいへんお世話になった/なっているが、説明欄にレコーディング日付くらい入れてくれないものか。データが貧弱なのは他のストリーミングあるいはダウンロードサービス同様で。ことに前者では少なくともサブスク加入すればフル再生/検索機能のほかに、詳しいデータ(とかフィジカルメディアのブックレットやジャケットなどの閲覧)アクセス可能なサービスとかないんすかね *4

そんなんでポピュラー音楽リスナーでも CD から移行しないでいるかたもおられるんぢゃなかろうか。データに関しては新作聴きたい分にはさして問題にならないし、あるいはクラシックやジャズなどのストリーミングサービスもコアなファンではなく聞き流し需要が支えているということか。

そもそも録音データに関してはフィジカルメディアでも開封しないと確認出来なかったり、ショップのサイトは販売元から提供が無いのか掲載していないということがけっこうある。販売元や *5 のようにアーティストのサイトからして然りですからね。当方のようなしらべもの好きの暇人くらいしか気にしないというところでしょうか *6

閑話休題


コーラスだと讃美歌のようになるのはよくありますね。番外編としてクリトゥス・ゴットヴァルト(1925–)編曲によるものを三つばかり。

アクセントゥス室内合唱団 / Chœur De Chambre Accentus (1991–)

(目を引くジャケットデザインで人気の(失礼)仏 naïve からリリースされたアルバム『アクサンチュス~トランスクリプション集』(2001年)はヒーリング界隈で話題になったらしい)

  • 2001/02 ? – w/ Laurence Equilbey (Cond); @Arsenal Hall, Metz, France ? *5 ; Arranged for Choir by Clytus Gottwald [6:31]

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スウェーデン室内合唱団 / Svenska kammarkören (1997–)

  • 2019/05/04–05, 06/16 – Maria Forsström (Mez) · Simon Phipps (Cond); Årstads kyrka, Heberg, Sweden; Arranged 1983 for Sixteen Voices by Clytus Gottwald. [6:21]

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ヴォーチェス・エイト / VOCES8 (2005–)

(こちらは八人組のアカペラグループ。下記ではソプラノ、オーボエをフィーチャー)

  • ? (Released on 2020/07/24) – Mary Bevan (Sop) · Nick Deutsch (Ob); St. John the Evangelist, Islington; Arranged by Clytus Gottwald and rescored by Blake Morgan.*7 [6.52]

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合唱団がヒーリング方面に振ったアルバムを出すのはアリだろうが *8 、マリア・フォシュストロームさんにせよメアリー・ベヴァンさんにせよ「普通の」でも聴いてみたいところ——深いリバーブにごまかされる(?)というようなこともあるかもだが、いかがであろう。前者にはオルガン伴奏によるマーラー・アルバム *9 があるようで、そちらはそちらで興味をそそられますが…( YouTube ではみつらなかった)。

そのほか声なしの器楽編曲版などもあったが、取り敢えずそれらは置いといて(ようやく)本編に進みます。


*1:そういえば余談ですがテンシュテットには『リュッケルト』の録音は残ってないのかしらんタムタムを強調したりするんですよねバルツァが歌った『大地の歌』(EMI)「告別」など壮絶なかんじになっておりました。

*2:しかしせっかくの企画だがヴェルテ=ミニョン・ピアノのマーラーとの<共演>はマルコム・マルティノーの伴奏で良かったような——クリスティアーネがどうこなしたのか、という興味は沸いたですが(あるいは、ピアノロールのセッティングや動作は別動画ででも、もう少し詳しく観たかったり)。youtu.be

*3:Mahler Foundation サイトのディスコグラフィ掲載のものだけでも(YouTube 有無関係なく)211 タイトルあった。Rückert Lieder 収録曲では 253 。mahlerfoundation.org

*4:ブックレットなどはリイシューされるたびに「特典」で変わったりするので、例えばリマスターされるたびに音源に合わせたりしてたら大変だが、そもそもフィジカルメディアはそういう商売をして来ていた訳で。とりあえず初出(オリジナル)を利用できるようにしておくのが無難か。また、「ヒストリカルもの」好きとしては、放送局などが権利を所有している音源は契約期間に縛られるのではないかという。サービス停止のリスクまで懸念してたらキリないですが。

*5:2008 年リリースの DVD

www.accentus.fr

からの動画と推測し下記から。

www.discogs.com

www.gramophone.co.uk

*6:さすがにヒストリカルものの復刻 CD はデータ命になるが、ダウンロードやストリーミングがそれらを扱っていないということでもない。逆にマニア向け、あるいはヒストリカルものにおける「高音質」の意味をよく分かっていない人向けに(んなこたぁないか)ヒストリカルものをハイレゾで配信したりしている。

*7:

web.archive.org

www.facebook.com

*8:シャンドスはスウェーデン室内合唱団の上掲を収録した下記アルバム(2019年)を昨今では珍しく(?)SACD-Hybrid Multi-channel を奢ってリリース。

www.discogs.com

*9:www.discogs.com