dancept2の日記

あやしうこそものぐるほしけれ

Music & Arts(M&A)のクナのブルックナーを聴く(その五)

M&A CD-1256

M&A のボックスセット(Ⓟ 2011)との音質聴き比べ下記続き。


CD6 :九番(ベルリン・フィル/1950 年 1 月 30 日)

28 日(さいしょの方に航空機の飛行音)ではなく、30 日の有観客の方。このときが戦後クナのベルリン・フィル復帰公演シリーズということらしい。クラウス・ラング(著)『チェリビダッケとフルトヴェングラー : 戦後のベルリン・フィルをめぐる2人の葛藤』(音楽之友社、1990 年)によれば、オケ側とは 1947 年に復帰し「長期契約」を結ぶというプランも進められていた模様。同書では、非ナチ化裁判絡みでのクナの言動に激怒したフルトヴェングラーが不快感を示したためこれは「保留」になったと(仄めか?)されている *1 。

もとの手持ちは上掲「その四」の八番同様、アウディーテの『クナッパーツブッシュ& BPO/RIAS 録音集 1950-1952』セット(Ⓟ 2010)より *2 。

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www.youtube.com

コンテンツラウドネス(content loudness)は M&A が -14.4 dB 、アウディーテは -14.3 dB と、今回は、ほぼ同じ *3 。CD での聴感上もそのような印象。

音質は、今回も当方的には、M&A も「オリジナル・マスターテープ」使用のアウディーテに遜色なく感じられる。

なお、冒頭、アウディーテ盤では 6 秒、22 秒あたりでドンっと何かが当たるような会場ノイズが、静かな《ブルックナー開始》のなかそれなりに派手に響く。よく聴くとそのあと 41 秒あたりでも弦がクレッシェンドする直前、最後のトランペットの合いの手に重なって音がする。これがいずれも、M&A 盤では聴こえない。アウディーテ盤 27 秒あたりの咳も無いようだ——ノイズ除去と言えばアウディーテの得意技(?)かと思いきや。

もしや、別マイクで収録の別ライン音源?、などと想像逞しくしたりして。あるいは正反対に、アウディーテ盤を加工? 前回と矛盾するようだが、といいますかこの程度のノイズは当方的にはさして気にならず「修正」は不要。が、これを理由にアウディーテ盤を取るというほどでもなし、というところ。

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以上、四十年代から五十年代の、生きの良いクナが聴ける貴重なボックスでございました(そのぶん音質的には苦しくなりますが)。そのような方針で旧版 *4 の NDR との三番(1962 年)は差し替えられたのでろうか、結果、ベルリン・フィル中心のセットということに。今回の九番もだが、弦の濃厚なポルタメントもそこここで耳を引いた。いっぽうでこの頃は下記のような状況もあったようですが、どうしてどうして強力な演奏が楽しめたセットでした。

高度な教育をまったく受けたことのない音楽家も含まれていました。ナチ時代に入って優秀な教師がいなくなり、次に戦争が始まって、あとに続くべき多くの若手音楽家が前線に駆りだされ、音楽を学ぶ時間などなかったのですから! 当時のベルリン・フィルでは、正確なリズムがきちんと守られているとは言えませんでした。

〔オーレル・ニコレ *5 〕

兵役も免除され数々の特権を得ていた帝国・帝都第一のオーケストラにしてこの状況だったのですから、ほかのオーケストラは推して知るべし、ではあるのですが。優秀な団員の補充などままならない状況だったことは想像に難くないとはいえ——ベルリン・フィルではとりわけ目立つ状態にあったということか:

RO: 戦後、オーケストラは困難な時期を経験し、あなた自身もその過渡期に指揮者を引き継ぎました。しかし、1960 年代初頭にはオーケストラはまるで生まれ変わったかのようでした。

HK: 私が引き継いだとき、どこに欠陥があるのか正確に把握していました。そして、おっしゃる通り、多くの奏者が引退の時期を迎えようとしていた過渡期でした。六年で我々は完全に若返りました。

〔リチャード・オズボーンによるカラヤンのインタビュー *6 〕

「欠陥(deficiencies)」。とはいえ「引退の時期を迎えようとしていた」とだけ言っておくのはカラヤンらしい慎重な言い回し、などというのはうがった見方か(笑)*7 。今回のボックスセットは(主に)この「過渡期」のベルリン・フィルのサウンドを捉えていたということになる。元コンマスのブランディスもカラヤンの証言を裏付け:

ブランディス:〔……〕1959年から61年まではハンブルク交響楽団、62年からベルリン・フィルのコンサートマスターになりました。

――昔のベルリン・フィルと今のベルリン・フィルとでは違いますか?

ブランディス:違いますね。1960年代初めのベルリン・フィルは、若い人がたくさんいるオケだったのです。私は26歳で入団しましたが、それでも若い方から3番目でした。

〔林田直樹によるトーマス・ブランディスのインタビュー *8 〕

この時期のベルリン・フィル(のシェフ)については以前、下記からの記事で触れていて、

戦後の非ナチ化政策下におけるベルリン・フィルの指揮者選定に関しても上掲や前述ラングの著作で(とうぜん)扱われているが、その当時のミュンヘンにおける状況を含む論文を見つけたのでご紹介したい。クナは非ナチ化裁判に訴追され活動禁止となる前に、ナチに追われる以前の本拠地ミュンヘンで指揮活動を再開していた。

(「番外編」へ続く)


*1:ご立腹の経緯については下記参照。

web.archive.org

楽団の理事のひとりで、フルトヴェングラーが「厚い信頼を置いていた」ヴァイオリン奏者フリッツ・ペパーミュラー宛の手紙で怒りをぶちまけている。ただしラング本には、クナがベルリン・フィルへの復帰の計画を「取り止めた」としてフルトヴェングラーのこの手紙に言及するものの、実際にこの件が原因で「延期」になったということを示す証拠は示されていない。手紙の時点(1946 年 9 月 23 日)ではクナも裁判中であり、何を根拠に 1947 年の復帰(同書の記述は「三年後の一九五〇年一月三十日になって初めて〔……〕カム・バックすることができた」)が進められていたのかも明らかではない。活動禁止が解除され次第というようなことからの逆算か。

*2:1 月 28 日、30 日、ならびに、2 月 1 日(2 日とされているが、アウディーテは 1 日としている)クナお得意のコムツァーク『バーデン娘』の名高い演奏含むポピュラーコンサートの CD も収録。

www.discogs.com

*3:ちなみに、ここでのラウドネス値は「インテグレーテッド・ラウドネス」、すなわちソース全体の音量を統合(インテグレート)して平均化した値だそう。前回記事も参照のこと。

*4:

www.discogs.com

*5:ヘルベルト・ハフナー(著)『ベルリン・フィル あるオーケストラの自伝』(春秋社、2009 年)、p. 227

ja.wikipedia.org

*6:1977 年 12 月、『グラモフォン』誌 1978 年 4 月号www.gramophone.co.uk

※ 要アカウント登録(無料)、以前は登録しなくてももっと読めたような……。

*7:「おっしゃる通り」などと付け加え話を引き込んでいるが、「過渡期」の指す内容もオズボーンと食い違ってるような気がしないでもない(我田引水?)。

*8:2010 年

note.com


Music & Arts(M&A)のクナのブルックナーを聴く(その四)

M&A CD-1256

M&A のボックスセット(Ⓟ 2011)との音質聴き比べ下記続き。

CD4 :七番(ウィーン・フィル/1949 年)

もとの手持ち無しにて省略……。上掲五番(1959 年)から比べるとぐっとヒストリカルな音に引き戻される。他レーベルからのを聴いてないですが、この当時のライブ録音としても冴えない部類の音質かと。 


CD5 :八番(ベルリン・フィル/1951 年)

もとの手持ちはアウディーテからリリースの『クナッパーツブッシュ& BPO/RIAS 録音集 1950-1952』(Ⓟ 2010)から *1 。ドイチュラント・ラジオ提供の「オリジナル・マスターテープ」(76cm/s)を使用との由。前年にフルトヴェングラーのセットが出たときには飛びついて入手したものですが、聴衆ノイズの除去のみならず肝心の音質も弄り過ぎ——やり過ぎの評が多かったですね。

研究者でも何でもない単なるいちリスナーとしては、やかましい咳などの除去は——ドキュメントあるいはアーカイヴとしての価値が損なわれるにしても、楽音や会場の空気感に影響がない限り歓迎するものであります *2 *3 。しかしながら、イコライジングである程度聴きやすく《調整》しておいてくれるのにも寛容な(?)当方でさえ *4 、その新鮮な鳴りっぷりに驚きつつ、むむむ、これは……と。

が、クナのセットでは、こうした声に反省したのか——しかし一年ちょっとしか間が空いていないので自己反省?——そこまで極端なマスタリングはしていないように思われる。で、 M&A 盤は、そのまた翌年の 2011 年のリリース。

アウディーテ盤は、YouTube に "Auto-generated by YouTube." の公式版があったので、同じく M&A 盤と並べて貼ってみた。なお、YouTube 専用にリマスタリングなんかはしないだろうしロスレスのコーデックでアップロードされてはいるのでしょうけれども、サーバー側でエンコード/圧縮されているので、厳密には CD とは異なる音声データとなる *5 。

www.youtube.com

www.youtube.com

"cont." (content loudness) は M&A が -16.7 dB 、アウディーテは -19.1 dB と M&A の方が音量が大きい *6 。今回もデータではかくにんしてないが、CD でも聴感上明らかに M&A の方が大きかった。

で、基本的な音の傾向、雰囲気は同じと言って良さそう。どちらもやや埃っぽい音。プチノイズやドロップアウト気味になる個所も同傾向。が、アウディーテの方がオリジナル・マスターからの筈なのが、同盤動画 35 ~ 47 秒あたりの弦パートなどノイズが——バックグラウンドのゴロゴロとしたのも——目立ち、強奏部ではひずみっぽくゴーストノイズも被さって来るような感じになる。楽音自体の方にはそれほどの差は感じず、マスターの素性の良さからノイズも露わになったというような感じはしない。M&A が上手く《処理》したのか、あるいは同系統でも劣化(?)の少ない別マスター?

更に、細かいこと言うと M&A はやや高域寄り明かるめ、アウディーテは低域のゴロゴロノイズも目立ったように低域が効いている感じ。結論としては今回聴き比べの冒頭部分では上のような目立つノイズ有無はあるものの、当方的にはまぁどっちでも良いかと。

(つづく)


*1:

audite.de

www.discogs.com

*2:しかもいまどきでは、ことにオン/オフがハッキリしているものは比較的かんたんに除去できる。演奏ミスの修正まで行なうのはどうかとは思いますが。

*3:マスタリング前後の両方をセットにした CD も出てたりしますが、大部分のユーザーにはコスト的に受け入れ難いものがあるでしょう。《無修正》版をダウンロード販売したりするオプションが設けられたりすると良いんでしょうけど。

*4:こうしたヒストリカルもののナローバンドな録音は、逆に f 特《調整》して然るべきといいますか。ところが「整」えられるどころか弄れば弄るほどヒドくなる感もあるのはご承知の通りで——なにか技術的にこれまでとは違う《調整》方法が必要なのかも? 近年は、音声抽出 →(ミックスダウンならぬ)「ミックスアップ」によるマルチトラック化/ステレオ化が行なわれ出したりもしてますが、現状程度の幼稚な(?)学習・シミュレーションに留まらない AI 活用による今後に期待。

*5:(ご参考、古いですが。)

*6:リンク先再生画面右クリックで表示される(上掲埋め込み画面では表示されない)「詳細統計情報」にある。ソースのラウドネス(国際電気通信連合:ITU が定める人間が耳で感じる音の大きさ)値と YouTube が定めているその基準値( -14 LUFS とされている。画面上ではソースの値の後ろに "tgt.-14dB" と表現)との差の値。LUFS については下記などを参照。

mount-q.com


Music & Arts(M&A)のクナのブルックナーを聴く(その三)

M&A CD-1256

M&A のボックスセット(Ⓟ 2011)との音質聴き比べ下記続き。


CD3 :五番(ミュンヘン・フィル/1959 年)

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この CD は当セットの白眉ではないか。これまでのは正直、熱心なファン向け、録音の良いデッカのスタジオ盤があれば良くね?的な……こうした印象は、このたび改めて聴き直して大いに修正されたところではありますが。で、当五番は 1959 年だけに録音も聴きやすくなり、ステレオ録音のアドバンテージもあるデッカ盤があれど落とせません。

瞑想的な雰囲気ではより晩年の演奏——五番の録音は残ってないようですが——に譲るところもありましょうが、ノリが良く豪快、クナのリズム感の良さ(?)がよく現れています。ハネてる感じ。そのいっぽう時間が停まったかのような沈黙におもわず息を呑むパウゼ、そして二楽章のあの弦楽器群の厚み——これですよこれ(笑)。気づけば音質比較を忘れ聴き呆けてました(笑)。

手元にあったのは安心の(?)「オリジナル・マスター復刻シリーズ」/ドリームライフ盤(Ⓟ 2006)。バイエルン放送提供による音源との由だが、出元不明の M&A 盤も遜色ない。どちらでもいいやというかんじだが、こうして聴き比べると金管の生々しさなどはドリームライフ盤の方が勝っているか。

そのぶん中域などのモコモコ感や大音量での飽和など録音の限界がより露わになっている感もある。結果的なのか意図的なのか、M&A 盤は良くも悪くも突出しないかんじ、やや穏当な仕上がりとも言えるかも。ただし今回もドリームライフ盤は出力レベル高めなので要注意ですが。

---

キングインターナショナルの事業停止もありドリームライフ→エピタグラフの音盤は入手しづらく、中古市場でもややお高めなよう。なので、この演奏のためだけであっても当ボックスの方で入手してしまう手もあり——前回の四番があまり良くないのは悩ましいところですが。五番単品もリリースされていたものの、そちらは Ⓟ 2002 の旧版だった(別マスタリング)*1 。

てか、あれですね、ドリームライフにはオルフェオから出ていた、今回と同じバイエルン放送の音源もラインナップに加えていただきたかったですね。前回ターラの DRA(ドイツ放送アーカイブ)音源とは違い(?)、オルフェオ盤が廃盤にでもなってなければ無理だったのかな、とは思いますけれども。長年貴重な音源を多数発掘しているオルフェオではありますが、バイエルン放送は、BBC みたいにラインセンス期間短くしときゃよかったのに ← 身勝手な感想(笑)。

(続く)


*1:ブラームス『悲劇的序曲』とのカップリング。

www.discogs.com


Music & Arts(M&A)のクナのブルックナーを聴く(その二)

M&A CD-1256

M&A のボックスセットとの音質聴き比べ下記続き。


CD2 :四番(ベルリン・フィル/1944 年)

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このセット(Ⓟ 2011)含む当方の手持ち CD や多くの音盤で九月八日バーデン=バーデンのデータが使用されていたが、2016 年にニューヨーク・タイムズに掲載されたエッセーをきっかけに三月十日ベルリン録音に見直された模様 *1 。

当時としては画期的だったマグネトフォン録音ですが、やはり音の古さは否めず。前回「音質にはすぐ慣れてしまう」とか書いてたが当盤を最後まで聴いた際、フィルアップの『ジークフリート』抜粋(1952 年)がはじまると、その潤いのあるサウンドにホッとしてしまった(笑)*2 。当時のマグネトフォンらしい(?)乾いた音なのは別として、ひずみっぽくヴァイオリンのかすれが目立つ。

もとの手元にはターラ盤(Ⓟ 1998)とドリームライフ盤(Ⓟ 2006)。どちらも M&A 盤のような「かすれ」はずっと少なく聴きやすい。

ドリームライフ盤のライナーノーツによれば、この演奏録音の(西側)初出は、1980 年頃ディスココープがリリースした、メロディア盤 *3 からの板起こしとみられる LP だそう。さすがに、2011 年リマスターの当盤に至ってもこのときのマスターが使用され……などということは無さそうだが、ちょっと頭をかすめてしまった。

また、イコライジングで低域を持ち上げているよう。これに関しては、だからといってダメというほどではなく、聴き比べると目立つものの許容範囲といったところか。迫力はある。

◯ ターラ盤とドリームライフ盤

両者はドイツ放送アーカイブ(DRA)からライセンスの音源を使用。ターラ盤には「RRG の歴史的アーカイヴから」ともクレジット。ドリームライフ盤は、ていねいな復刻で好評だった「オリジナル・マスター復刻シリーズ」から。ライナーノーツ(前述)に、両者は「同じ」音源だがターラ盤は「注意深く聴いていると、独特の味付けがなされているのが感じられる」として敢えて復刻に踏み切った経緯が述べられている。一枚選ぶならやはりドリームライフ盤でしょうね。まぁ予想 *4 どおりですけど。

どちらも久々に聴いたが、ターラ盤のあとにドリームライフ盤を聴いてみると、その冒頭、ベールを取り去ったとまでは行かないものの鮮度の良さのようなものも——おなじ DRA 音源にも関わらず——かんじられた。ただし収録音量も大きいので要注意。

冒頭のホルン動機、フルートが入って繰り返される直前、テンポを落として深々と沈んでいくが——クナのイメージに反しテンポがかなり収縮する——このあたりでのプチっというノイズや、ところどころややドロップアウトぎみで音量が不安定なところなどもいちばんハッキリしている。要するに鮮明。

それに対しターラ盤はやや明るめなかんじ。それはそれとして、この録音としては聴きやすい音に仕上がっているとおもう。「注意深く聴いてい」ないのだろうが、今回のように聴き比べでもしない限りターラ盤でもじゅうぶんという印象である *5 。

◯ 冒頭ホルンの「ヨレ」

で、よくわからないのが冒頭のホルン初っぱなのヨレで——ええと、この件については以前何かで読んだなと……やはり、クナ・ファンお馴染み、『クナを聞く』でした。詳しくはそちらも参照いただくとして、

knaclub.com

ターラ盤がヨレていないのは記事のとおりなのだが、ドリームライフ盤については(少なくとも現状の Web 版時点では)リリースされておらず言及されていない。で、このドリームライフ盤、ターラ盤と同じ DRA 音源にも関わらず、ヨレている。

ドリームライフ盤は Ⓟ が八年後なので、

  • ターラ盤リリース後、テープがよじれた

可能性もある(?)。が、記事にあるとおり、ヨレあり音源自体は、それ以前から存在が確認されているのである。それらのヨレとドリームライフ盤のヨレが同一なのか未確認な上に、これも考え難いのだが DRA には両方のテープが保管されていて、それぞれ別系統のテープで音盤化された可能性もある(?)。つまり、

  • モスクワから返還されたテープ(RRG オリジナル)と、その戦時中コピー(各局への配給用等のコピーが東ドイツに残されていた、DG がリリースしたフルトヴェングラー戦中録音のルート)

あるいは「返還」は二度行なわれているので、

  • オリジナルのマグネトフォン・テープ(1991 年)と、その前(1987 年)に「返還」されて来ていた、そのデジタルコピー

更に、

  • 上記の合わせ技。もう訳わかりません(苦笑)。

ドリームライフ盤ライナーノーツにはヨレに関する言及は無し。で、すでにして混乱してるんですが更には、もっとも状態が良くなさそうだった M&A 盤はヨレていない。『クナを聞く』では旧バージョンのマスタリングで、こちらはヨレている、との由。

という訳ですっかり嵌まってしまったのだが、何の結論も無しに混乱したまま終わる(笑)。

ちなみに……上掲記事ではターラ盤は「ノイズ・リダクションが効き過ぎ」とあり、当方の印象とは違っているのであった *6 。

(続く)


*1:www.abruckner.com

*2:バイエルン国立歌劇場ライブ。音量が大きくなるとたちまち飽和してしまい派手にひずみますが。

*3:ドイツ帝国放送による、いわゆる RRG 音源。上掲 *1 リンク先参照。ディスココープは M&A の前身。

*4:聴き比べにおいては予断とも言う?(苦笑)。

*5:そういえば「オリジナル・マスター復刻シリーズ」、この盤だったかは忘れたが「驚くほど新鮮な音」といったような惹句が踊っていたものの、そこまででもないよなぁというような印象を受けたときもあった。かつての劣悪な海賊盤などとは雲泥の差でしょうけど。

*6:なお、ターラも同一演奏を複数回リマスタリングしたりしていたが、当盤に関しては規格番号自体は同じ。

Music & Arts(M&A)のクナのブルックナーを聴く(その一)

M&A CD-1256

M&A がリリースした『クナッパーツブッシュ指揮ブルックナー交響曲&ワーグナー選集(Hans Knappertsbusch conducts Bruckner Symphonies and Wagner Selections)』、2011 年リマスタリングの、新しい方のボックス。ブルックナー第三・四・五・七・八・九交響曲と、余白には『指輪』からの抜粋の 6CDs 。「修復(restorations)」:アーロン・Z・スナイダー(Aaron Z. Snyder)*1 。

ブル五と『黄昏』抜粋は 1959 年だが、それ以外は五十年代中盤までの録音で、元気(?)で勢いのあるクナを聴くことが出来る。

musicandarts.com

youtube.com

状態の良さそうな中古がお安く出ていたので入手。第七以外のブルックナーは他レーベルからリリースされたものが手元にあるのだが悪名高いオルフェオ盤も含まれてたりという訳で、手持ち CD と聴き比べでもしてみようかなと。

と、申しましても当方、良くも悪くも音質にはすぐ慣れてしまうタチで聴き比べはニガテな上、じっくりじっくーり聴き比べてようやく分かるような違いはべつにどっちでも良くね?、という。以下あくまでも、おもに冒頭部分で軽く聴き比べ、というかんじであります(ヘッドフォンを使用)。

そのような観点(?)で結論から申しますと

  • 手持ちぶんとの比較では四番以外はまずまずオススメ出来るかんじ。が、四番以外のも、当方の手持ちのがあれば買い足す(買い変える)までのことはないかな、というところデシタ——『指輪』抜粋が聴けるのは別にして。

また、これまた音質とは別ですが、もうひとつ付け加えますと
  • 余白(?)のワーグナーとのインターバルはじゅうぶん取られているものの、楽章間が短い。時間的には収録出来たハズ。もっと短い音盤もあるだろうし、完全にカットせず会場ノイズ部分も少しは残した方が臨場感が高まるというのは置くとしても、ややせわしなく感じてしまった。もっと余韻に浸りたいではないですか(笑)。


CD1 :三番(バイエルン国立管/1954 年)

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冒頭、ヒスノイズ?、これはムリにノイズリダクション掛けてない良い兆候か、と、ほんの一瞬おもったのだが、弦の pp 伴奏に重なるのは会場ノイズだった。それらを取り去ったりはしていないということではありますが(それにライブ感が増しこそすれ不快では無いし、すぐ楽音にかき消される)。

で、特筆すべきこともとくに無い、この時代なりのライブ録音というかんじか。

もとの手元のは前述オルフェオ盤(Ⓟ 2002)*2 。アイヒンガー/クラウスの「最恐」コンビであります。冒頭、上記会場ノイズが聴こえない。ワタシでもすぐに《違い》に気づく。その後も高域に伸びやかさがなく、鼻がつまったような音で元気がない。ああ、こんなだったよなと、すぐに合点がいった。で、これはもう、手放してもいいやと(笑)。

ざっと聴いた印象では(←これ重要)、以上。おしまい。

なのだが、そもそも M&A 盤は音量自体大きいことにもすぐに気がつく。冒頭の音量を合わせようとすると、ヘッドフォンアンプのボリュームひと目盛ぶんくらい(ややオーバーか)回す必要がある。この状態であれば会場ノイズも普通に聴こえてくる。また、《音量は正義》というか、聴いた印象に与える影響もとても大きい。

で、音の大きい部分では、心なしかそれほどまでの音量差は感じられない(ような気がする)。これは波形やデータを取って検証していないので何とも言えず(「ウェーバー・フェヒナーの法則」? *3 )以下戯言になりますが、だとすると M&A 盤はコンプレッサーを掛けて聴き易く(あるいは全体の迫力が増すように)している?

さんざんな評判の「最恐」コンビですが、たしかに音量を上げれば聴けるかんじになった。コンプレッサーなしの(?)、《その意味では》素の音と言えるのかもしれない(?)。

なお、オルフェオ盤はバイエルン放送からの正規ラインセンスでマスターテープからの音源ということになるのだろうが、当該 CD 1 分 19 秒過ぎにやや目立つ電子的な(?)ノイズが載っている。昔々 FM 放送のエアチェック中、家族に言ってあったのに蛍光灯を点けられグロー球で発信おもわず殺意を抱いた(笑)のを思い出させるような音 *4 なのだが、M&A 盤では聴き取れなかった。

ただし、冒頭部分で言えば 9、29 秒あたりなどにもブツっというような小さなノイズが載っており、これは M&A 盤でも確認出来るので同系統の音源だと思われ。M&A の方が年月が経過しているのにノイズが(増えるのではなく)無くなっているというのは、

  1.  同系統の音源でもスナイダーがマスタリングで「修復」消去した。
  2.  同系統でも(この部分の)状態のよい別音源を使用した、または切り貼りした。
  3.  同系統でも九年後には、このノイズは消えていた(?)。
  4.  同系統でもオルフェオ盤のマスタリング過程で混入した(?)。

etc. まぁ 1 なんでしょうかね。

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結論としては、高域の伸びやかさ、ならびに第一印象および、コンプなどもってのほかというのがオーディオ好きの共通認識ではありましょうが、この手のヒストリカル録音ではこのように聴き易く《調整》するのもアリかなと、ボリューム調整なしでサクっと聴く状態を優先して、引き続き M&A 盤を取る(笑)。それに、「余白に」というのは申し訳ない、ベルリン国立歌劇場管との『黄昏』抜粋ジークフリートの「ラインへの旅」「葬送行進曲」が収録されている(1959 年)。聴き惚れてしまった。これは素晴らしい演奏録音。

オルフェオは、ロックの昔のアナログ盤のように "Play loud" の注意書き入れた方が良いかもしれない(笑)。

(続く)


*1:Discogs には、"New & Upcoming" の記事はあったがデータベースには 1998 年の旧版(CD-1028)しか無い模様(三番は別演奏を収録)。

www.discogs.com

newreleases.discogs.com

*2:

www.discogs.com

*3:「たとえば、100の刺激が110になったときはじめて「増加した」と気付くならば、200の刺激が210に増加しても気付かず、気付かせるためには220にする必要がある」

w.wiki

*4:音量はあれよりははるかに小さいですが——蛍光灯と原付バイクは天敵で大キライだった(笑)。