ヴァレンティーナ・リシッツァ(情報に疎い当方、この方についてもよく知らないのだが、2012年にはデッカと契約してるんですな)が、たび重なるクレームに怒りを爆発させ、ブロックされた自身の演奏の該当パートに SME が著作権を主張する音声を同期させた(らしい)動画をつくってアップしている(苦笑)。グールドの録音だとの申し立てがあったと。どこが一致なのよ!(2017年2月公開)。
で、「楽曲」では、上記作曲家の作品に権利を主張してきた Music Sales (Publishing) *5 以外の各法人、ICE_CS を除くと一本の動画へのクレームなのだが、いずれも "SET ME ON FIRE" という曲と45分08秒から50分00秒が「一致」したという主張。しかし当方でアップした楽曲ブラームスなんですけど(苦笑)。
"SET ME ON FIRE" をググってみると、David Amber というアーティストの YouTube 動画がどどーんと先頭に出てくる。同名の曲はほかにもあるようだが取り合えず見に行ってみると、ダンス系(?)の軽快なエレ・ポップ。似てねー(笑)。説明記事に「ライセンス クリエイティブ・コモンズ表示ライセンス(再利用を許可する)」とある。うーむ。
再利用可能な楽曲(のタイトル)を隠れ蓑(?)に、照合結果が「一致」するように細工する手口が可能なのではないかと勘ぐってしまいますね。照合用にいろんな曲を登録しておくとか(これはめちゃ手間だな(笑)。逆に判断アルゴリズムが分かっていれば、どんな曲でも「一致」できるような照合用ワイルドカード曲も作成可能?)。実際には自動照合および一連の手続きが簡易化するということで申し立てに Content ID による照合が必須という訳でもないようではあるが、この程度の PV のチャンネル動画に人手対応するほどヒマではないだろう。ここでは揃いも揃って妙な(?)照合パターンで5社完全一致ですし。
「サウンドレコーディング」の方も、曲は一致しているものの演奏者がいずれも主張する内容と一致しない。ヴァレンティーナのパターンだが、方々でまっとうなユーザから怒りを買っている The Orchard Music *9 も3本。同社についても Wikipedia英語版に記事があった。なんと2012年から( IODA との合弁により)SME が出資しており、2015年3月には完全子会社化していた。ここでも SME すか。同記事は YouTube ユーザによる「懸念」についても言及している。
で、いずれも「動画に広告が表示されることがあります。」(「著作権者による収益化」)のみ。これまでのところは広告が表示されることもなく(たぶん。PV 次第か)、とくに影響は無かったのだが、ここに来てさいきんアップしたものが SME によりヴァレンティーナ同様244か国でブロック。
SME は国ごとに「収益化」についての YouTube との契約がどうちゃらといった事情もあるやの情報も見かけたが、「収益化」だったのが、ある日とつぜんブロックされたことも1本だがあった。ところがこれは数日で勝手に解除(ただし「収益化」に戻っただけ)。今回もしばらく放置してみていたところなのだが、これを機会に当方も「異議申し立て」なるものを行なってみることにいたしましょう。
ヴァレンティーナに対してもあの態度なのだから SME が主張を取り下げるとも思えず、この手のネタもけっこう目にはするが、結果が出たらまたエントリいたす所存。
*8:もとよりそう名乗っているが、このグループの出版部門と言っているのか。なお、Universal Production Music という会社もあり、2016年までは UPPM (Universal Publishing Production Music)という社名だった模様。こちらの前身のひとつは Chappell Recorded Music らしい。Chappell Music というのは当方も音盤にクレジットされているのを見かけた記憶がある。所在地は先の UMPI と同じロンドンのフラムブロードウェイ(Fulham Broadway)20番地。
テーマ曲はブラインド・ウィリー・ジョンソン(1897年 - 1945年)の「ダーク・ワズ・ザ・ナイト(Dark Was The Night, Cold Was The Ground)」をモチーフにしているというのを知ったのはずいぶんと経ってからだった。この本歌(?)のカバーも使用されている(同 31:20 - )。映画ではラストシーンだった。ジョンソンの録音は、1977年にバッハやモーツァルトなんかといっしょに宇宙探査機ボイジャーの「ゴールデンレコード」に収録されて打ち上げられたんですってね。
ライは1970年のデビューアルバムでカバーしていた( "Dark Is The Night" のクレジット。たしかほかでもカバーしているようなことをどこかで読んだ記憶があるが調べがつかなかった)。このアルバムのジャケットもいいですね。アメリカの旅。ヴェンダースはこちらの録音も聴いており、最初から「ダーク・ワズ・ザ・ナイト」を使うことにしてライに音楽を依頼したようだ。