本題になかなか戻らないのだが、またまた寄り道。サクソンウォリアー Saxon Warrior (JPN) がレーシングポストトロフィーもぶっこ抜いて RaceBets の英国ダービー2018オッズは9対1から5対1となり単独一番人気。少し差のある3着に敗れたザペンタゴン The Pentagon (IRE) が9対1から11対1となったが二番手キープ。以下前回同様のリンク。
「ダービー・ベッティングオッズ | 競馬」(オッズチェッカー)
The Derby Betting Odds | Horse Racing | Oddschecker
(上記のアーカイブ(archive.is) ※ ブックメーカー名が飛んでいる)archive.is: The Derby Betting Odds | Horse Racing | Oddschecker
で、そこらへんの動画見ていて出てきたのが下記の「ドキュメンタリー」(52分11秒)。この一連のエントリに相応しいタイトルではないか。そしてタイトルからも想像されるように、サクソンウォリアーにも大いに関連のあるフィルムなのだった。
アップしてるのはアローフィールドスタッド(Arrowfield Stud)、ということでここでピンと来る方も多いのだろうが、当方はなんだっけと。途中で再生止めてチャンネル・ページ見に行くとリンク先に www.arrowfield.com.au とある。ドット au 、あー、オーストラリア。ホーリックス(はニュージーランドだが)やベタールースンアップの JC や、後者のトレーナー出て来てたな。クリックしてみるとドドーンと
"REAL IMPACT"
の文字。なるほどシャトル繋養先で。デインヒルやラストタイクーンの名門牧場、ホームページも気合入ってますね。なるほど、なるほど「日本の台頭」≒ 社台の台頭とはいうものの、ずいぶん「ヨシダ・ブラザーズ」フィーチャーしてるなとは思ったんですわ。こりぁ製作全面協力ですな合作だとしてもおかしくない。以前、社台スタリオンステーションからフジキセキ、クロフネ、フレンチデピュティなどが繋養されたが、2007年の馬インフルの影響で途絶えていたのがここへ来ての復活ということらしい。2017-18シーズンはモーリス、ミッキーアイルも繋養したということで、要するに日本のシャトル種牡馬の CF ですな。それでも近年の日本競馬の紹介フィルムとして悪くないんぢゃなかろうか。「ハイテク」が強調されたりする。ノーザンテーストと猫の写真も初めて見た(笑)。エンドロールには Sky Racing Production 2017 / In Association with Arrowfield Stud のクレジット。Sky Racing というのはオーストラリアの競馬やドッグレース専門の放送局らしく、いくつかチャンネルがあるようだが、最初に戻るとタイトルバックに "Sky Thoroughbred Central" とある。海外レースなどを放送するチャンネルのようで、ここで放映されたプログラムだったのだろう。
Wikipedia 英語版
フィルムでジャパンカップ創設が契機となったといったことを合田氏が語っているが(たぶん(苦笑)*1 、当時は絶望的な雰囲気も漂ってましたなぁ英国ダービーの一番人気を送り出すことになるなど思いもよらぬことでござった。なにかの座談会を憶えておるのだが、今年亡くなった山野浩一氏はけっこう楽観的で、開放を進めてレースにステータスを与えれば日本の生産馬にも海外から買い手が付くようになる、なるべき等発言すると、なにを世迷言を的な雰囲気になった。白井透氏などからは、いやいや日本の土壌は火山灰質で強い馬などつくれない、解放などとんでもない、といったようなやり取りが交わされてたように記憶している *2 。
ここで生産の「グローバル化」についてまで話を広げるのは手に余るが、JC 創設に始まる「改革・解放路線」が、バブル経済にオグリ・ブームなどにも後押しされ推進されていく。1997年に JRA の売り上げは4兆円を超えてピークを迎え、シーキングザパールやタイキシャトルが活躍したのが1998年。すでにバブル経済は崩壊していた。構造改革ブーム。生産頭数は減り続け、「日本のサラブレッドの台頭」の陰で「零細」生産者のみならず、多くの名門牧場も姿を消して行った。起死回生を掛けたラムタラの失敗などもあった。社台グループへの寡占がますます進んで行く。現在の競走馬の生産頭数は1972年レベルである *3 。こうした側面をこのフィルムが伝えるはずもないが、競馬というスポーツの世界が、「グローバルな」競争に晒されていくのはやむを得ない趨勢だったろう *4 。
「日本の台頭」も、逆に日本の経済規模に近いポジションを遅まきながら(火山灰質のせいかは知らぬが)& 経済的地位は低下し続けているものの、得つつあるといったところではないか *5 。中国の存在感てどうなのかしらん *6 。
(続く)
*1:そのだいぶ以前から世界に通用する「強い馬づくり」という標語があったくらいで、JC を契機とするのも細かいこと言えば少々違うのだが、実際結果を目の当たりにして絶大な「インパクト」があったのは事実だ。当時は日本の馬に公式(?)のラテン文字表記がなく、競馬会(JRA)がモンテプリンスを Monte Purinsu などと表記して叩かれるといった笑えない話もあった。ちなみに第一回にダービー馬は出走してないし、勝ったメアジードーツは GII ウイナーだった筈よね。
*2:山野氏は左翼的な思想の持ち主だったとおもうがこと競馬に関しては一貫して新自由主義的態度でしたな。左翼思想と新自由主義の歴史的な関係性云々は別にして、なにごともバランスのもんだいということでもある。親方日の丸、非常に閉鎖的だったのは間違いない。
*3:「年次別生産頭数」(生産関連統計:日本軽種馬協会)。ピークは1992年。
*4:というかそれでも世界的に見れば高賞金にも支えられ恵まれた環境にあるということなのだろう。日本の生産界の「構造変化」についてはいろいろと研究もあるのだろうが未読、機会があれば読んでみたい。
*5:追記:こちらも参照。