dancept2の日記

あやしうこそものぐるほしけれ

シェーンベルク指揮 CSO によるマーラー『復活』第二楽章(1934年)

"CSO" とはシカゴ響ではなく、キャデラック交響楽団(Cadillac Symphony Orchestra)である。

盛大なノイズに貧弱な響き、途中記録ディスク交換のためと思しき欠落部分もある。そこから当方勝手にブーレーズのような分析的、あるいはリヒャルト・シュトラウスのような冷静な演奏が立ち上がってくるのを想像したのだが、だいぶ様子が違う。ゆっくりとしたパートなど意外なほどたっぷりと歌わせたウィーン風味(?)の演奏が聴きとれる。

1934年ロサンゼルスとあるが、コメントにあるとおりニューヨークでの演奏らしい。シェーンベルクてロスのイメージだったが、渡米したころはボストンのマルキン音楽院(Malkin Conservatory of Music)で教鞭を取っていたと。キャデラック響とは NBC のラジオ局、ブルーネットワークのオーケストラのことで *1 、当時は放送番組のスポンサー名をオケに冠することがよく行なわれていたとある。

YouTube は七年前のアップだが、2016年にマーク・オバート=ソーン(Mark Obert-Thorn、そちら方面では高名なお方なんですね)の手によるマスタリングでヒストリカル録音の復刻レーベル、プリスティン・クラシカル(Pristine Classical)がリリースしていた模様。カップリングはケンペン指揮ヒルフェルスム放送フィルの4番。下記リンクは同レーベルのホームページのカタログページ。オケの名称の件などこちらの記事でも言及されている。

シェーンベルク、ケンペンのマーラー・レアリティーズ:交響曲第2番&第4番(1934年/50年)- PASC466」(プリスティン・クラシカル)下記は上掲より、ハントリー・デント(Huntley Dent)による『ファンファーレ(Fanfare)』誌40巻1号(2016年9/10月号)のレビューから。

シェーンベルクはアメリカに来たばかりであり、彼の恐ろしい評判にもかかわらず、我々は彼を「著名な作曲家」と呼ぶミルトン・クロス(Milton Cross)によるラジオ紹介を耳にする。

恐ろしい評判(笑)。1934年のアメリカでは、本人はおろかマーラーですらまだそれほど受容されていなかっただろう。この絶好の機会(?)に、自作とともにこの曲(の第二楽章)を取り上げた意図はなんだったのか興味深いところですね。

自作というのはメゾ・ソプラノのローズ・バンプトン独唱による『グレの歌』から「山鳩の歌」で、さすがにそれよりあとの曲では「恐ろしい評判」になると局の人間から止められたのか(笑)。『グレの歌』と『復活』であれば収まりはいいですね。下記ウィーンのシェーンベルク・センターのアーカイブでどちらも公開されており、Flash Player で再生可能。1928年ベルリンでの自身の指揮による『浄められた夜』もあった(オケ不明)。

"The Classical Music Guide Forums" のこちらのアーティクル(2011年8月4日)によれば、もともとシェーンベルク・センターのアーカイブには YouTube のとおり1934年ロサンゼルスとの記載があったようで(音源も同センターのかも)、こちらのフォーラムへの投稿者が、アーティクルに投稿した情報をセンターにメールしたとあり、現在は1934年4月8日ニューヨークとなっている( "Slipped Disc" のこちらのコメントよれば4月8日放送とあるが、センターでは明記されていない)。

上記コメントのリンク先に、ボストン時代のシェーンベルクに関する地元紙による記事があった。もともとマルキン音楽院に招聘されて渡米したということらしい(1933年)*2 。ボストン響を「すばらしく良い(extraordinarily good)」と褒めるいっぽう、クーセヴィツキーについては「スコアを読むことさえできないほど無知」と書き残しているそうな。北東部の寒さはこたえたようで喘息と気管支炎に苦しみ、1934年秋には気候の良いロスに移ったとある。

シェーンベルクのボストン時代を呼び覚ます - ボストングローブ」


*1:のちに ABC はこの局から独立したらしい。なお、NBC 響の設立はこの三年後1937年。

*2:シェーンベルクをアメリカに招聘したチェリストのジョセフ・マルキンについては下記(1910年のシューマントロイメライ」)の説明文に詳しい。

「ダーク・ワズ・ザ・ナイト」

https://theredlist.com/media/database/films/cinema/1980/paris-texas/019-paris-texas-theredlist.jpg

(下記の続き)ヴェンダースといえば音楽ファンにアピールする作品が少なくないが、そこでライ・クーダーでも『パリ・テキサス』の方で。

ナスターシャ・キンスキーさまの存在を知ったのは、フードを被った横顔のあのスチール写真、ロマン・ポランスキー監督『テス』の新聞広告だった。こんな美しいひとがこの世に存在しているのかと、純朴な中学生は呆然としたのだった(笑)。『パリ・テキサス』はその五年後、ジョン・ルーリーと出てきた楽屋の化粧台から振り返るシーンはゾっとするほどの美しさだった。

むかしからロードムービーは大好きで、中学生になると地元の名画座に行くようになった。『スケアクロウ』観に行ったりしたな。当時は名画座なんていうすばらしい空間がまだそこここに残っていた。映画なんて現実逃避というのは痛いところ突かれて不愉快なのだが(笑)、ロードムービーはそれに輪を掛ける訳だ。中二病からいまだ抜け出せないおっさんは、まだ見ぬ旅に想いを馳せるのであつた(遠い目、ならぬアーメン?)。

https://theredlist.com/media/database/films/cinema/1980/paris-texas/026-paris-texas-theredlist.png

ライ・クーダーのスライドギターを起用したのはヴェンダースの慧眼だ。すでにこちらの印象が固定してしまっているのだから当然なのだが深いリバーブの掛かったこの音楽以外ちょっと想像できない。サウンドトラック盤収録のハリー・ディーン・スタントンのヴォーカルはべつだん好きでもないけれど、回想の8ミリフィルムのシーン(など)で流れる「カンシオン・ミクステカ(Cancion Mixteca)」ももうね、なんともほっこりさせられる(上掲 6:41 - )。

テーマ曲はブラインド・ウィリー・ジョンソン(1897年 - 1945年)の「ダーク・ワズ・ザ・ナイト(Dark Was The Night, Cold Was The Ground)」をモチーフにしているというのを知ったのはずいぶんと経ってからだった。この本歌(?)のカバーも使用されている(同 31:20 - )。映画ではラストシーンだった。ジョンソンの録音は、1977年にバッハやモーツァルトなんかといっしょに宇宙探査機ボイジャーの「ゴールデンレコード」に収録されて打ち上げられたんですってね。

ライは1970年のデビューアルバムでカバーしていた( "Dark Is The Night" のクレジット。たしかほかでもカバーしているようなことをどこかで読んだ記憶があるが調べがつかなかった)。このアルバムのジャケットもいいですね。アメリカの旅。ヴェンダースはこちらの録音も聴いており、最初から「ダーク・ワズ・ザ・ナイト」を使うことにしてライに音楽を依頼したようだ。

東芝の CM は覚えていなかったがこちらは記憶にある。カッコ良かったね。

RaceBets.com:ネット時代の馬券販売と「グローバル化」その四.二/ジャパンカップの PMU(フランス場外馬券公社)オッズとラウンドオーバー比較

またまた少々寄り道。

「その三.一」で、RaceBets のジャパンカップに関する2015年のツイートに関連して、「 JRA のオッズなので買っても配当的メリット・デメリットはない」と書いたのだが、

今回の「出走表」を確認しに行ったところ、ホストトラックたる JRA を「トート・オペレーター」とした(と推測される)「マーケット」(東京11R分および京都12R分)以外に、PMU(フランス場外馬券公社)による「マーケット」も受け付けていた(こちらは JC のみ)。「サポートセンター」にはこのような記載は無かったのだが(「その四」参照)。

わざわざ別「マーケット」を提示しているということで、お察しのとおりオッズは異なる(!)。凱旋門賞JRA がセパレート・プールで別オッズを付けていたように、PMU も自身のトータリゼーターで JC の賭けを受け付けているのだろう。

で、RaceBets の PMU「マーケット」だが、PMU は日本以外のいくつかの国のレースの「トート・オペレーター」に記載されているので、「ブックメーカー・ベッティング」である可能性の方が高い気はするが、PMU との共同プール、すなわち三番目のカテゴリーである「トート・ベッティング」(後述)の可能性もある。両者のオッズについてはどちらであれ同じだが。

が、それ以前に、「その三.一」では念頭になかったのだが RaceBets は JC の固定オッズによる賭けも受け付けていたのであつた。

下表は肝心のそのオッズの比較。

2017年ジャパンカップにおける RaceBets 提示オッズ比較

 着順・馬名(馬番) JRA PMU 固定
1. Cheval Grand (1) 13.3 1.9 16.4 5.6 13 3.4
2. Rey De Oro (2) 3.8 1.4 5.7 1.1 4 1.6
3. Kitasan Black (4) 2.1 1.2 3.1 1.1 2.3 1.26
4. Makahiki 15.0   18   15 3.8
5. Idaho 101.2   20   51 11
6. Rainbow Line 57.7   108   51 11
7. Soul Starring 9.3   19   11 3
8. Yamakatsu Ace 116.5   253   81 17
9. Guignol 71.8   11   34 7.6
10. Satono Crown 5.7   6.2   5.5 1.9
11. Sciacchetra 48.2   99   41 9
12. Sound Of Earth 102.0   155   101 21
13. Boom Time 322.5   94   151 31
14. Last Impact 270.9   230   201 41
15. Iquitos 122.9   6.4   51 11
16. One And Only 280.1   353   208 41
17. Decipher 445.8   89   201 41
馬単(1-2) 52.5 58.6  
3連単(1-2-4) 133.4 132.3  
馬連(1-2) 17.7 37.1  
3連複(1-2-4) 13 21.6  
ワイド(1-2) 4.6 12.7  
ワイド(1-4) 3.5 11.2  
ワイド(2-4) 2.3 1.7  
ITA(2着を当てる)(2)   2.75  
Trita(3着を当てる)(4)   2.75  
  • PMU の「出走表」上の単勝オッズは、整数値が二桁以上になると小数点以下が切り捨てで表示されている模様。的中分は「結果」欄にも示されるが、こちらのオッズは小数点以下も表示されていたのでシュヴァルグラン単勝 16 倍は 16.4 倍とした(オッズ書式をフラクショナル=分数表示に切り替えても、それぞれ 15対1 、154対10 と表示される)。

  • ザっと見て確認したが「サポートセンター」の記載どおり "JRA" と表記した RaceBets による "SP" は、JRA 発表の確定オッズと一致する。

PMU でもキタサンブラックレイデオロサトノクラウンが人気を集めていたのには変わりないものの、やはり JRA のオッズに比べると明らかに(日本から見た)外国馬が支持を集めているのが良くわかる。したがって PMU の「マーケット」では相対的に日本馬の配当が大きくなる訳である。固定オッズ(の最終確定値)は両者の中間ぐらい。PMU でディサイファにも若干支持が入っているのは昨今のディープインパクト効果?。逆にソウルスターリングについては冷静な評価を下していたといったところか。なお、「出走表」の「結果」欄に「オフタイム」(締め切り時刻?、cut off time?)が表示されるが、PMU の方が2分速い。

また PMU は、馬単3連単などに比べて馬連、3連複の配当が大きいのが目立つ。後者の控除率に日仏でかなりの差があるのか。単勝の方は材料もそろっている(し計算もラクな)ので、ラウンドオーバーを比較してみた。計算方法については「その四.一」参照。

2017年ジャパンカップにおける RaceBets 提示
単勝オッズのラウンドオーバー

着順・馬名(馬番) 勝利(的中)確率(リスク)評価
JRA PMU 固定
1. Cheval Grand (1) 7.5% 6.1% 7.7%
2. Rey De Oro (2) 26.3% 17.5% 25.0%
3. Kitasan Black (4) 47.6% 32.3% 43.5%
4. Makahiki 6.7% 5.6% 6.7%
5. Idaho 1.0% 5.0% 2.0%
6. Rainbow Line 1.7% 0.9% 2.0%
7. Soul Starring 10.8% 5.3% 9.1%
8. Yamakatsu Ace 0.9% 0.4% 1.2%
9. Guignol 1.4% 9.1% 2.9%
10. Satono Crown 17.5% 16.1% 18.2%
11. Sciacchetra 2.1% 1.0% 2.4%
12. Sound Of Earth 1.0% 0.6% 1.0%
13. Boom Time 0.3% 1.1% 0.7%
14. Last Impact 0.4% 0.4% 0.5%
15. Iquitos 0.8% 15.6% 2.0%
16. One And Only 0.4% 0.3% 0.5%
17. Decipher 0.2% 1.1% 0.5%
合計 126.5% 118.4% 125.7%
ラウンドオーバー 26.5% 18.4% 25.7%
利益期待値(控除率 21.0% 15.6% 20.5%

JRA 「利益期待値」は、ほぼ単勝控除率(20%)どおりの値を得られた。差異は丸め誤差だろう。固定オッズは JRA と差はない。これらに対して PMU のラウンドオーバー、「利益期待値」すなわち控除率がかなり低いのが分かる。上述のように小数点切り捨ての影響も含んでいるが、ここで気にするほどではないだろう。

これは日本でも JRA はセパレートプールで行なう海外競馬のサイマルキャスト販売では控除率を下げるべきだという指摘、議論があったが、PMU はフランス国内のレースより控除率を低めに設定しているのではなかろうか。このレースの実際の売り上げや、JRA にどの程度ライセンス料を支払っているのかも未確認だが。凱旋門賞JRA は売り上げの3パーセント前後を「手数料」として支払った模様(「その二」参照)。ジャパンカップ凱旋門賞ほどのバリューは無いだろうから、PMU に値切られちゃったりしているかもしれない。また、PMU「マーケット」においても、RaceBets から PMU のみならず JRA にも支払いが発生しているのかといった商流も不明。

(続く)

RaceBets.com:ネット時代の馬券販売と「グローバル化」その四.一/ Starting Price(出走最終賭け率)についてのことなど

2. ブックメーカー・ベッティング(Bookmaker Betting)(続き)

  • スポーツ情報サービス社(Sports Information Services Ltd.)

    イギリス、アイルランドの「トート・オペレーター」(上掲エントリ「その四」参照)に採用されている。にわか仕込みだが(苦笑)、イギリスの場外ブックメーカーに対して初めて衛星情報サービスの提供を行ない、サイマルキャスト環境実現の嚆矢(?)となった企業である。1986年設立。今年になって略称同じ SIS で、サテライト情報サービス社(Satellite Information Services Ltd.)から社名を変更した。

    映像配信の権利は主催者と契約した配信会社が独占し、主催者(ホスト・トラック)とて RaceBets などのブックメーカーと個別に配信契約は行なわないといったような事情もありそうだが、オッズ提供も含めたパッケージで RaceBets に「サテライト情報」を供給しているということだろう。音声中継から始まった事業は映像配信に発展し、さらには賭けに関する取引プロセスの環境を提供するしくみを構築している。

    SIS トレーディング・サービスは、ロンドン中心部の最先端の本部から、さまざまなスポーツイベントの領域のオッズを集積しています。当社は、完全にアウトソーシングされたトレーディングサービスを提供し、賭けオペレーターに価格と負債管理を提供します。
    ここでは SP のオッズ提供ということで、それなりの控除率への調整などを行ないつつ基本トータリゼーターで計算してるのではないかと想像したりしたのだが、こうした掛け金プールによる<計算>が、トート社の「独占」に抵触するということか。控除率を下げられればトート社は勝負にならないが、そこになんらかの手段でオッズにちょこっと調整を加えて独自「アルゴリズム」とうたってしまえば抵触しない?。SP に限定した説明ではないが SIS は、
    スポーツデータを解釈し、当社の専門的な価格設定チームが高品質でリアルタイムの価格フィードを提供するために、PhD レベルの統計学者の専門チームにより業界をリードするアルゴリズムが開発された。
    としている。

    しかしそもそも SP とは SPRC(出走最終賭け率規制委員会)によるオッズではないのか(「その四」参照)。あるいは「独占権を持つ」トート社からの(孫)ライセンス(?)の可能性も?、とおもったりしたのだが、RaceBets「サポートセンター」の説明に、「賭けの表示がない場合、送金された賭けはトート・オッズで決済されます」とあった。ところがこのあたりの説明、当方の英語力に加え画面の絵などが無いこともあってよくわからない(苦笑)。原文引用する。

    UK, Ireland and United Arab Emirates

    For fixtures taking place in the UK, Ireland and the United Arab Emirates the Starting Price (SP) represents the odds prevailing on a horse in the on-course fixed-odds betting market at the time a race begins. RaceBets is basing its payouts for these countries on the Starting Prices determined by the Satellite Information Services Ltd. (SIS) in the UK. If no SP is returned settlement of bets will be based on the final betting shows transmitted by SIS. Where no betting shows are transmitted bets will be settled at Tote odds.

    • 1) ギャンブル禁止、ホスト・トラックが「トート・オペレーター」になることはあり得ないアラブ首長国連邦分も SIS が提供。
      で、最初に SP の一般的な説明。
      イギリス、アイルランドアラブ首長国連邦で行われている出走最終賭け率(SP)は通例、レース開始時の場内固定オッズベッティング市場における、ある馬に対する支配的なオッズを表します。
    • 2) 次に RaceBets におけるこの扱いだが、
      RaceBets は、これらの国のためのその支払いを英国のサテライト情報サービス社(SIS)により決定される出走最終賭け率に基づいて行ないます。
      「通例」である SPRC による「支配的なオッズ」ではなく、SIS により決定される出走最終賭け率で「支払い」が行なわれる、と読めるのだが、支払いを行ないます、ではなく、「基づいて」行ないます、というのも引っ掛かる。というのも次のケースのときが SIS の最終ベッティングによるオッズだと断っているのである。が、これも同じ「 SIS により決定される出走最終賭け率」のことではないのか。
      SP が返されない場合、ベットの決済は、SIS によって送信された最終ベッティングの表示に基づいて行われます。
    • 3)「 SP が返されない場合」というのがどのようなケースで、「出走表」にどう表現されるのかも?なのだが、ベットが締め切られオッズが確定するまで「出馬表」の SP 各馬のオッズ欄が "SP" 表示のままになったりするのか。

      表示はどうあれ(また SPRC のオッズかどうかは別にして)1) の説明どおり、固定オッズの締め切り時最終オッズが SP だとおもっているのだが、SIS は 固定オッズ用と SP 用とで別々のオッズを提供したりしており、SP 用が提供されない(「返されない」)場合には固定オッズ用のオッズが用いられるというようなことを言っている?。上掲 SIS のサイトを改めて確認すると、「すべての主要レースのアンティポスト」「早期賭け率(Early Prices)」「ボード(表示)賭け率(Board Prices)」「出走最終賭け率(Starting Prices)」をカバーしている、として「出走最終賭け率」を明示している(が要するによくわからない(苦笑))。

      または、SPRC のオッズか「返されない」場合に(どうしてそうなるのかは知らないが)SIS による固定オッズの締め切り時最終オッズが適用される?。

      はたまた、SPRC によるオッズでの支払いにおいて、ベットを受け付けだしてから締め切りまでのいわば参考オッズ<表示>が SIS による固定オッズ、この状態のことを「 SP が返されない場合」と称している?(しかしここでオッズの<表示>ではなく「ベットの決済」と説明している)。

      なお「出走表」に SP とは別に表示される固定オッズは、SIS 提供ではなく RaceBets が設定したオッズである筈である(「その四」参照)。

    • 4) さらに SIS が対応していないレースでも、トート社が受け付けているレースであればトート社のオッズで RaceBets が賭けを受け付ける?。
      ベッティングの表示がない場合、ベットはトート・オッズで決済されます。
      このケースが 3) で書いた表示になるような気がするのだが、あるいは「ベッティングの表示がない場合」とは、「出走表」は提示されるが固定オッズも含めてオッズが何も「表示」されないことを言うのか(ただし固定オッズは上記のとおり RaceBets によるオッズ)。

      いずれにせよ賭けは受け付けるのだが、トート社が提供するオッズを見てくれ、ということか。この場合映像も配信されなかったりするのだろう。

    下記はクラックスマン Cracksman (GB) が勝利した今年のチャンピオンステークスの「出走表」と、レーシングポストのレース結果である。後者の SP(この SP は SPRC による公式オッズだろう)のオッズは RaceBets/SIS の SP のオッズ(ユーザー設定によりフラクショナル=分数表示に切替可能である)と全出走馬一致している。やはり 2) は「通例」どおり SPRC オッズなのか。 
  • SPRC(出走最終賭け率規制委員会、Starting Price Regulatory Commission)

    イギリスの名馬物語などにおける人気についての記述も、ブックメーカー名が明記されず単なる「発走時のオッズ」といった記載になっているのが長年疑問だったりしたのだが、この場内の(ざっくり言うと)平均値のことだったのだろう、たぶん。というか、「その四」で触れた2009年のレーシングポストの記事を再掲するが、

    SPRCの運営資金はSIS社(Satellite Information Services)とターフTV社(Turf TV)が拠出している。

    とある。RaceBets のいう「 SIS により決定される(determined by the Satellite Information Services Ltd. (SIS))」出走最終賭け率とは、SPRC による SP を SIS が配信しているということなのであろうか?(混乱)。

    と、よくわからないのだが、RaceBets に限らずイギリス、アイルランドにおいて、固定オッズを提供した上でさらに SP による賭けも受け付け、かつそれをシンプルにトート・オッズとしないのには、それなりの理由があるのだろう。後者では「トート・オペレーター」たるトート社の控除率を反映したオッズとなり RaceBets 側に裁量の余地はないのだが、さりとて SPRC による公式 SP で払い戻せば RaceBets 側の意向がオッズに反映できる訳ではないので、こちらもまた裁量の余地はない。要するにトートと SP との比較では(とりあえず固定オッズは置いといて)、SP の方がブックメーカーにも賭け参加者にも好まれているということなのだろう。(おそらく現状の英)トートにおける

    [単複セットのイーチウェイでない]単勝のみのプールに適用されるマージンは、伝統的なブックメーカーが期待する約三倍である。複勝の控除はさらに高くなる。これは SP を押し下げるので、トート価格を取り入れることが、過度のオーバーラウンド *1 を生み出すという SP の批判者の懸念をいかに満足させるか見え難い。

    「協議会 | 出走最終賭け率規制委員会」SP については批判があるようで、2015年のグランドナショナルでの「高オーバーラウンド」が切っ掛けとなり SPRC で「 SP の将来について」の協議が行なわれたようである。上記引用はその際の「代替案」のひとつとしてのトートの説明。

(続く)


*1:Over-round については、下記 "bettingmarket.com" というサイトの記事に説明があった。

「『オーバーラウンドの理解(賭け市場の価格設定メカニズム)』(2015年)」冒頭に五頭立てのレースを例にした説明がある。各馬勝利の可能性は確率的には五分の一、20%である。そこで全馬に5倍のオッズを付け(各馬が平均して売れ)れば、売り上げ/配当 ∝ 5/5 = 1 = 100%、賭けの受け手はトントンである。このような賭けを「ラウンド」ブックという。しかし五頭全部に、四頭立てならトントンとなる4倍のオッズを付ければ、五頭立てにも関わらず各馬に四分の一、25%の勝利確率・リスクを見込んだことになり、五頭合計すると125%で25%の「オーバーラウンド」となる。このとき賭けの受け手は 25% / 125% = 20% で売り上げの20%の利益を期待できる(あるいは、売り上げ/配当 ∝ 5/4 = 1.25 = 125% で25%の「オーバーラウンド」、賭けの受け手側は売り上げの 1-4/5 = 0.2 = 20% の利益を期待できる)。


RaceBets.com:ネット時代の馬券販売と「グローバル化」その四

RaceBets.com によるベットの続きにようやく戻る。もともとドイツの競馬会の財政難の話題からだった。という訳で "Win(単勝)" や "Place(複勝)" など賭けの形式(RaceBets では「タイプ」と表している)についてではなく、GaloppOnline.de や Turf-Times.de のレ―ス記事からリンク設定され、ドイツで事業を開始し、「世界中のレースに賭ける」を標榜する同社が、どのような方式・しくみ(同じく「カテゴリ」と表記)で賭けを提供してるのか、というお話である。


同社「サポートセンター」の「賭けのルール(Betting Rules)」によれば、RaceBets の賭けは「固定オッズ」「ブックメーカー」および「トート」の三つに「カテゴライズ」されている。

1. 固定オッズ・ベッティング(Fixed-Odds Betting)

「賭けのカテゴリ:固定オッズ賭け」Racebets がオッズを設定する、アンティポスト(Ante-post、出走馬掲示前[前売り]、長期前売り)の賭けを含む、(販売/購入時)オッズ固定方式。よく知られる、いわゆる「ブックメーカー方式」ですね。ただし前述のとおり、「ブックメーカー・ベッティング」とは別のカテゴリである。

「選定されたレースのみで(on selected races only)」提供とあるが、これはパリミュチュエル方式の国のレースへの固定オッズ「提供」を念頭に置いての記述だろう。下記は今年の凱旋門賞の「出走表」(同社システムの投票画面)だが、固定オッズ方式も提供されている。「ルール4適用」である。

  • タタソールズ委員会第4規則
    そのリスクを含めて賭けを行なうアンティポストは不出走による返金はないが、ポスト=出走馬掲示(通常レース24時間、最大48時間前)後の固定オッズによるベットでは、出走取消(除外)馬への掛け金は返金される。のだが、「タタソールズ委員会の第4規則」が適用され、的中馬券の配当に出走取消にともなう「控除」が行なわれる。この規則が適用されるレースには「出走表」に「ルール4適用」と表示される。

    パリミュチュエル方式に馴染んでるとあまりピンとこなかったりするが、同方式では取消・除外馬への賭けはプールから外され、言わばしくみ上自動「控除」されている訳だ。「ルール4」については下記サイトの記事にも説明があった。4対5(2.25倍)から20対21(約1.95倍)の馬の取消・除外で配当の50%、など取消・除外馬のオッズによる配当からの「控除」率が規定されている(当然人気の高い馬が取消・除外になれば「控除」も多くなる)。

    「第4規則とは? | 第4規則ベッティング控除説明」(ジャストブッキーズ)この規定は「英国のすべてのブックメーカーに適用される」「業界標準の控除」とあるが、RaceBets (「その三」で触れたようにマルタの事業者)は、凱旋門賞に表示があったようにイギリス、アイルランド以外のレースにも適用している。上の記事によれば「一般的なスポーツ」の賭けにもルール4は採用されているとの由だが。

    ルール4については RaceBets「サポートセンター」にも説明があるが、規則全文(ルール12まである)はタタソールズ委員会ホームページで確認できる。2010年の改訂にともなう解説付きで、ルール4は20 - 22ページ。規則では、控除率は1ポンドあたり何ペンスかで表記されている。

    "Tattersalls Committee Rules on Betting(タタソールズ委員会 賭けに関する規則)"(PDF

    タタソールズ委員会は要するにイギリスのブックメーカーの業界団体で、その役割は、ブックメーカーと購入者の紛争解決のための独立した紛争解決サービスの提供と、ブックメーカーのためのルールの策定である(下記ホームページ)。所轄官庁の賭博委員会(Gambling Commission)により消費者紛争のための裁判外紛争解決手続(所轄官庁および情報)規則(2015年)(Alternative Dispute Resolution for Consumer Disputes (Competent Authorites and Information) Regulations 2015)の提供機関に任命されたとある。

    「場内競馬賭けの紛争を解決するタタソールズ委員会」

    上掲のとおり「場内(on-course)」としている。よくわからないがオンライン賭け提供事業者は所轄が違ったり(?)、これまでの経緯とか色々あるのだろう。「一般的なスポーツ」や、競馬のオンライン事業者や場外の事業者が採用することは自由だが、「業界標準」ルールは場内で決めるのダーといったところ?。前掲規則の前書き(P. 3)に、同委員会の前身(のひとつ)は、1795年創設のタターソルズ取引室委員会(Committee of Tattersalls Subscription Rooms)なる機関に遡るとある。ちなみにジョッキークラブ設立は1750年、タタソールズ社の設立は1766年、英国最古のクラシック、セントレジャー創設が1776年、ウェザビー社によるゼネラルスタッドブック第一巻発行が1791年、リチャード・タタソールが亡くなったのが委員会設立の1795年。「取引室」というのは同社にあったジョッキークラブのメンバーのためにリザーブされていた部屋で、メンバーが寄り合って賭けなどを行なっていたらしい(en:Wikipedia)。この部屋で、賭けのルールも検討されていたのだろう。

  • ベストオッズ保証(Best Odds Guaranteed)
    この BOG というしくみも今回知った。一部のレースで「出走表」に提示されている。「サポートセンター」には記述が見当たらないのだが、「出走表」の「ベストオッズ保証」にカーソルを当てると表示されるアノテーションに説明がある。日本語版の訳はいまいち分かりにくいが、固定オッズでベットした際には、賭けた倍率か SP(出走最終賭け率)いずれか高い方のオッズで決済するという早割(?)である(といってもアンティポストは適用外だろう)。上掲の凱旋門賞は適用していないが、下記のようにイギリスでも、ロイヤルアスコット開催初日いずれも G1 で、セントジェームズパレスステークス(4R)とキングズスタンドステークス(3R)は適用しているが、クイーンアンステークス(1R)には適用していない。

2. ブックメーカー・ベッティング(Bookmaker Betting)

RaceBets 自身のリスクで提供する固定オッズ以外の賭けを指すとある。

「賭けのカテゴリ:ブックメーカー・ベッティング」「日本」のレース( JRA のみの模様)もこのカテゴリで販売。一見するとその名に反し、イギリス、アイルランド等を除く(後述)、各国主催者(ホスト・トラック、Host Track)またはそれに委託された賭け提供事業者が提供するパリミュチュエル方式のベットである。

  • トート・オペレーター
    これら JRA などのオッズ提供者を「トート・オペレーター」と表しており、他社の(ほんものの?)ブックメーカーの馬券を代行販売したりしない。では後述3項の「トート」カテゴリとは?、となるのだが、冒頭の定義どおりでポイントは下記である。
    ブックメーカー・ベッティングとは、あなたの賭け金からのお金がトートプールに追加されることを意味しません。あなたの賭けは RaceBets で行われ 、どんな配当も当社から直接支払われます。

    オッズは、現地主催者等のトートを使って提示する。RaceBets はオッズ設定を行なわなくても賭けを提供できるのだが、現地オッズよりも販売比率の高い、すなわち人気が集まった馬が勝つと、払い戻しに回す額が予定分より多くなるリスクがある、ということだろう。逆なら現地主催者の予定している控除より多くを手にできる。買う側にとっては関係ないが。

    しかしながら、払い戻しの責任をどこが負うのかは買う側にとって大きな違いである(破綻や払い戻し保証のリスクなど)*1

    すなわち最初は、RaceBets から見ると JRAブックメーカーのひとつと見做されるということ?ともおもったりしたのだがそうではなく、ブックメーカーたる RaceBets が賭けを引き受けてますよ、更に言えば、トート=パリミュチュエルのセパレート・プールで賭け参加者同士がプール金を取り合うのでもなく、ブックメーカーと勝負してるんですよ、ということを明示しているという訳なのだった。

  • SP(出走最終賭け率)
    ブックメーカー・ベッティング」のオッズは、「出走表」上で、"Starting Price betting(発走[時設定]賭け率ベッティング)" より "SP" すなわち「出走最終賭け率」*2 と表示される(上掲凱旋門賞「出馬表」も参照)。

    イギリス、アイルランド等はパリミュチュエル方式によるオッズではなく、文字通りこの SP によるオッズで受け付けている。オッズの設定方法がどうあれ、買う側は、前述1項の購入時オッズ固定と締切までオッズが変動するベットとが識別できれば良いというところなのだろうが、そもそもパリミュチュエル方式自体が SP 方式のいち形態とカテゴライズできるということだろう。

    で、当方この SP というしくみの賭けが行われていること自体知らなかった。ブックメーカーといえば固定オッズ、との固定観念(ここはひとつスルーいただきたい(笑)、むかーしむかしイギリスでブックメーカーと(ささやかな)「勝負」したりしたのだが、このようなややこしい方式の存在についてはまったく意識もしていない。

    この SP ベッティングについては下記に少し説明があった(「訳注」および「SPRC[Starting Price Regulatory Commission、出走最終賭け率規制委員会]とは何か?」参照)。当時当方が意識していなかったのは、場外の売り場では「勝負」したことが無かったためか。「2006年の制度見直し」「SPRCは2004年に発足」とあるが、それ以前からしくみ自体はあったのだろう。これについても長くなりそうなので(おかげで長年の疑問が少し解けたりはした)、いったんここまでにして先に進む。

  • トート社
    「トート・オペレーター」なる用語が使われているにも関わらずオペレーターには採用されていない英トート社について。イギリスでパリミュチュエル方式の独占権を持つトート社は、2011年に民営化されていた。こちらも「その二」で触れた記事を見るまで知らんかった *3 。売却後「独占的なプール賭事免許」も、2011年3月から7年間が有効で、その間合計6,500万ポンド(約91億円)の商業報酬を競馬会に支払うということである。下記は同社買収の記事(レーシングポスト紙/ジャパン・スタッドブック・インターナショナル:JAIRS)*4で、イギリス、アイルランド等のレースのトート・オペレーターは、イギリスのスポーツ情報サービス社(SIS)、旧サテライト情報サービス社となっている。

(続く)


*1:話がズレる & 当然ながらトート・オペレーターによる各種ルールの違いもある。

*2:競馬用語としては「出走最終賭け率」が一般的(?)なのだろうが、「Starting Price」はオークションの「開始価格」でもあったりで少々混乱があるようだ。オーストラリアの競馬においては、「SP betting」は固定オッズ方式の賭けを意味したりもするらしい(en:Wikipedia)。研究社『新英和辞典』は「(競馬の)出走最終賭け率」、クロスランゲージ『37分野専門語辞書』などでは完全意訳で「最終賭け率」としている模様。JRA も後者を採用。下記 SP 単勝人気の説明に「最終単勝オッズ」とある。しかし、親切と言えば親切なのだが、この「主要国 WEBサイトの歩き方」とかもう JRA 気合入り過ぎ。

*3:下記参照。

*4:その後の状況についての記事(2017年5月8日)。

「54コースの関与で新たなプール賭け運営に弾み | 競馬ニュース | レーシングポスト

五輪で和楽器バンドからトラキアの平原まで~ステフカ・サボティノワのことなど

今さらですがいいですね。何といってもビジュアルがいい(そこか)。

でも実際、PV もド派手にはじけてて好きなんですわ *1

なんでこんなに新鮮なのか。そりゃ「春の海」聴きゃ小生もなごむが、これまでお琴(箏)もそんないいとおもったことは無かった。沖縄の三線を別にしても和楽器を取り入れるなんて多くあったし、邦楽サイドからのアプローチだっていっぱいある。

津軽の怒涛の寄せってメタルに通じるんでしょうね。ギターと三味線が駆け上がってって尺八がふぃよ~と出てきたりするのも最高(笑)。何かで観たのだが、神永氏いきなり虚無僧の恰好になって吹いていた。すばらしい(笑)。

「起死回生」のマスタリング・エンジニアはテッド・ジェンセンというエライかた。当方としては三線や尺八も少しボリューム上げてミックスしてほかったですねチト線が細く聴こえるような。和太鼓は迫力十分なんだけど。まぁでも些細なことですわ。そもそも PC のスピーカーで聴いてどうこう言えるのか(苦笑)。

界隈の情報に疎いうえ不覚にもテレ東のリオ中継ではスルーしていた。IOC の公式なんちゃらに選ばれてるらしいですが、コメント欄盛り上がってたようにもう TOKYO 2020 オープニングでいいかも。川井憲次の「謡」もいいが *2

ストリングスに心が洗われます。4:00 過ぎからのソロ、「とおかみ~ えみ~た~め~」。ああカタルシス(笑)。遠神恵賜と唄ってるらしい。

180度違う音楽だが五輪つながりで(三宅純)。確認してませんがこのギターもアート・リンゼイですねたぶん。

ヴェンダースの映画『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』でフィーチャ―された曲のようだがこの投稿 V は無関係で、大部分 "Dance Americana, 1956" という映像集からとの由。これはでもぴったりで。そこはかとなく不安をかき立てる。

さてリオ閉会式の「君が代」ほんとに西田和枝社中の皆さんだったのかどうかは知らぬのだが、ブルガリアン・ヴォイスの CD は手元にあったはずなので久々に、と探したのだったが出てこない。間違いなくこのジャケットの日本盤だった( "Le Mystère Des Voix Bulgares (Volume 1)" 、Discogs より)。

なんでブルガリアン・ヴォイス買おうとしたのかは覚えてないのだが、当時『ミュージック・ガイドブックxx』(xxに年が入る分厚いムック本)なんかを読んでワールド系もすこし漁ったりしていた。確か入手した CD のライナーはとうよう氏で、そのムック本で氏が紹介していたかもしれない。曲も分からず店頭にあったブルガリアのコーラス団によるいくつかの中から、単にジャケットがかわいらしいので選んだのだ。確か。( YouTube も無かったしね)。

で、最初聴いたときから印象的だった曲のひとつが、「トラキアの平原から」("Prïtourïtze Planinata" / "Chant De La Plaine Thrace" / "Chant From The Thracian Plain")。この曲はコーラスではなくソロで唄われるのだが、サウダージブルガリア語ではなんて言うのか)、ですなぁ。シンプルなバスの動き含むアレンジもいい。バグパイプ一発も強烈。今回初めて知ったのだが、この曲日立のテレビの CM に使われてたんですな。記憶なし。1988年(古)。まんま『ブレードランナー』というか *3 。ブラウン管が空を飛ぶ。

ジャケット違うがアルバムはこちら(同曲は 25:33 - )。

CD 入手するまで10年までは経ってなかったとはおもうが、それにしてもなんとなく CM が耳に残ってたのかなぁ。というより CM に使われるくらいで、どこかで聴いたことがあるような気がする「なつかしさ」をおぼえる曲なんですね。

Stefka Sabotinova(ステフカ・サボティノワ?)名義でもアップされていた。キリル文字だと Стефка Съботинова となるらしい Wikipedia ブルガリア語版に記事があった。「トラキアの平原から」原題は „Притури се планината“ と綴る模様。仏語タイトルからの重訳だったのだろうが、「平原」とは関係なさそうだ。

ステフカは1930年、ヨーロッパ最古の都市のひとつとされるスタラ・ザゴラ近郊の Rozov Kladenets(ロゾフ・クラデニェッツ? / Розов Кладенец)村の生まれ。五歳から歌い始め1947年にプロフディフで学生だったとき Zhecho Dolchinkov(ゼコ・ドルチンコフ? / Жечо Долчинков)に見いだされブルガリア国立ラジオに出演。1951年には300人が応募したフィリップ・クーテフ国立合唱団のコンクールで優勝し1965年まで在籍 *4 。1973年から1985年までブルガリア国立ラジオ・テレビの女声民謡アンサンブル *5  に参加しソロイストを務める。スイスの音楽学者/プロデューサーのマルセル・セリエ(Marcel Cellier)による録音がスイスで "Le Mystère des Voix Bulgares" としてリリースされたのが1975年、英 4AD レーベルがリイシューしたのが1986年。翌年リリースの Volume 2 が1989年グラミーを受賞。ソロアルバム二枚と Tinka Pesheva(ティンカ・ペシェワ? / Тинка Пешева)とのデュエットアルバムがある。2010年6月にはブルガリア政府から「最高の栄典」スタラ・プラニナ勲章一等級賞を授けられたが、その翌月死去した *6

„Притури се планината“ は1994年に新たなリミックス・バージョンがつくられヒットしていたらしい。当方はオリジナルの方が好きだ。


*1:そいや BABYMETAL「メギツネ」の PV も良かったな。ところどころカットインされる和室のシーンが、ぞわぞわ~っと来るくらい、貞子なみに怖かったりするともっとよかったんだけど。

*2:甲殻機動隊についてはなにも知らないのだが(苦笑)。

*3:ちょうど続編がやや(?)話題になってましたね残念ながら観に行ってませんが。

*4:フィリップ・クーテフ国立民謡舞踏アンサンブル(Националният ансамбъл за народни песни и танци „Филип Кутев“ / The National Ensemble for Folk Songs and Dances "Philip Kutev")は同年創設らしいので、設立オーデションを兼ねていたのかもしれない。なおブルガリアは1990年まで共産主義政権。

*5:1952年設立。こちらがのちの "Le Mystère des Voix Bulgares(The Mystery Of The Bulgarian Voices / ブルガリアン・ヴォイスの神秘)" 、通称ブルガリアン・ヴォイス。1997年に放送局からは独立したようである。

(The Mystery Of The Bulgarian Voices 公式サイト)

*6:以上 bTV の記事など Wikipedia 出典のリンク先などもつまんでいる。アンナ・トモワ=シントウやヴェッセリーナ・カサロヴァもスタラ・ザゴラ出身のようだ。こちらの „Сега“ 紙による長めのインタビュー(2006年)はリンク切れだったが移動先 URL を発見、翻訳を試み別エントリに投稿しようかともおもったのだが、ブルガリア語さっぱりで断念(ヘタレ)。

彼女の訃報を報じたブルガリアの放送局 bTV の映像がアップされていた。カナ転写はステフカ・サボティノワでよさそうですね。


中国の状況斜め読み:ネット時代の馬券販売と「グローバル化」その三.四

(その三.二(下記)の追記で中国について少し拾ってみていたのだが、長くなったのでこちらに移動し加筆)JAIRS の海外競馬情報では下記あたりか。やはり「至高の目標」(タタソールズ社エドモンド・マホニー会長)である。「至高」であるが、かつ「目標」*1

本土進出となるとああいう国なのでかなり痛い目に会ってるようだが(今やさほど有望な市場でもないのかもしれないが日本にすら「大して」入り込めないでいた)、そんなリスクなど何のその(?)、どちらさんもひと儲けしようとたいへんである。

「そしてもちろん、中国は"至高の目標"です」(ブラッドホース、2017年7月1日)「CHCの赤と黄色の勝負服を背負ったアベルタスマン(Abel Tasman)がケンタッキーオークス(G1)を制すなど、顕著な活躍を見せている。しかしCHCは依然として、中国本土で競馬のステータスを向上させるのに苦戦」(ブラッドホース、2017年8月17日)「中国が米国のサラブレッドに門戸を開放することを視野に、ケンタッキー州の農務当局者と競馬産業のリーダーは、中国と関係を構築しつつある」(ブラッドホース、2017年5月6日)「CHCは楽観的だが、中国政府は1940年代から続いている賭事禁止の措置を変更しようとする明白な意思を示していない」(ブラッドホース、2016年10月1日)「中国本土では現在、過去最多の350~500レースが運営されているようです」(レーシングポスト、2016年5月19日)「中国大陸には現在30競馬場があり、さらに建設されている」「HKJCは、中国大陸を拠点とする上位10人の馬主を特定しており、これらの馬主が合計で約1,200頭のサラブレッドを所有」(ブラッドホース、2016年1月28日)「チャイナホースクラブ(China Horse Club 2010年設立)は瞬く間に、クールモア牧場、ゴドルフィン、シャドウェル牧場(Shadwell)、カタールレーシング社(Qatar Racing)、アルシャカブレーシング社(Al Shaqab Racing)などの大馬主に名を連ね」「黙認競馬段階における多くの挫折にもかかわらず“競馬の黄金郷”と呼ばれる中国」(レーシングポスト、2015年10月29日)サラブレッド競馬を組織し始めるために行なった最近の試みはすべて無に帰した“悲しい歴史”」(ブラッドホース、2014年5月24日)

下記はかなり古い記事だが(ブラッドホース、2011年10月17日)、北京のリスイ牧場(Lisui Farm)とはメジロアルダン、スリルショー、ゴールデンフェザントタイトスポットらを繋養していた(旧)北京龍頭牧場?。土壌が良くないようなことを何かで読んだ記憶があるが、空気の方は大丈夫なのであろうか(北京郊外ではあるだろうが)。

JRA もちびちび(?)対応中、

平成28年度事業報告別冊「JRAの事業活動について(平成 28 年)-JRAは、毎週走り続けます。-」(PDF

P. 22 に下記の記載がある(6.競馬の国際的な発展への取組み(4)アジアにおける競馬の発展への取組み ① 中国との関係)。

○ 中国本土の馬産業事情の調査を実施するとともに、中国の馬産業関係者等の日本招聘、日本の競馬関連技術者の派遣等による指導を実施

○ 馬産業関係者間の協力関係が進展した結果、中国本土への日本産馬の輸出が実現

ブラッドホースが報じているようにケンタッキー州もいろいろ取り組んでいたようだが *2 、「アジアにおける競馬の発展への取組み」には「招聘」までせねばならんのか。

先方には伝統ある香港競馬もある(とするとサラブレッドの生産関係の「招聘」か?)。「日本の競馬関連技術者の派遣」も香港ではなく「本土」であろうが、(競馬ではなく)「馬産業関係者」との交流ということで、「実現」した「日本産馬の輸出」も競走用あるいはその種牡牝馬とは限らない?。「競馬の」「国際的な発展への取組み」って報告盛ってるんぢゃないの、などと疑ってしまったのだが、中産階級の増加で乗馬人気が爆発とか農村部で農耕馬の需要が…などという話もまた聞いたことはない(笑)。

で、このあたりの情報についてもまったく疎かったのだが、上掲はじめ散々参照している JAIRS の一方の前身、(財)競馬国際交流協会が、2003年ごろから交流を進めていたらしい。下記は2010年の記事だが(競走馬のふるさと案内所「馬産地ニュース」)、

現在でも中国には在来種を中心に約700万頭の馬がおり、中国農政部の管理下に「中国純血馬登録管理委員会」が1999年に設立。日本から中国への馬の輸出は2000年から可能になり、今年3月には最初のステップとして51頭のサラブレッドが輸出されている。

とのことで、いろいろ困難もあるのだろうが事業報告が「実現」とするほどのことなのかはよくわからない。「最初のステップ」から六年越しの二番目のステップ、ということならそれなりのトピックかもしれないが *3 。いずれにせよ、現在に至っても、

閉塞感漂う国内の競馬関連産業に大きなビジネスチャンスを与えるものとして期待されている。

のだが(「至高の目標」あるいは「競馬の黄金郷」)、(「悲しい歴史」をかんがみて)じっと模様眺め中というところだろうか。で、上掲記事で講演を行なっていた競馬国際交流協会の小池尚明理事長(当時)が現在、会長を務めているのがこちら。代表の仙波リリ子氏は、中国人向けに日本の医療サービスを仲介する隆仁堂メディカルグループという会社の CEO でもあるようだ。とてもチェック仕切れないが、トップページ「(株)日中ビジネス企画からのお知らせ&中国馬産業情報トピックス」に多くの記事が掲載されている。

各記事に直接リンクできないのでブラウザで検索いただくしかないのだが、「成都―ドバイインタナショナルカップの続報(出典:環中馬術網 2017/4/4)」によれば、同開催は今年で四回目。5レースで賞金総合計は375万元。「2015年中国馬業総まとめ( 出典:大陸競馬網 2015/12/31)」の記事に「2015年中国馬業の10大ニュース:競馬は初めて馬術より大きな影響力を示す」などなど。

「中国馬業協会競馬委員会第2次会議は成功裏に開催(出典:中国馬業協会HP 2015/4/10)」では、初代中国馬主連盟会長の王衛東氏が、

中国の競馬産業はここ数年で大分成熟してきた。今は中国産のサラブレッドは海外産とは引けをとらないくらいまでレベルアップしてきたと思う。例えば、河北省のヒョウ志国氏所有「任我行」号、当社の「無敵」号などなど。[…]無敵だけではなく、当社の「東興小子」も、多くのレースで輸入馬を制して勝利を収めてきた。

と語っている。なお、中国の2013年 - 2015年のサラブレッド生産登録頭数は31、30、48頭 *4 、「中国は世界の馬産業が注目する元へ オーストラリアは4年後ゼロ関税に(出典:新浪スポーツ 2015/12/23)」によれば、本土への輸入馬については、それほど高馬は入って来ていないようでもある *5

中国国内においてNZのサラブレッドは大きなシェアを占めつつある背後には莱徳馬業の貢献が大きい[…]。

一方で、中国は900万頭の馬を保有する馬大国であるが、付加価値の高い馬が大変少ない現状である。税関統計によると、2012年中国は海外から競走馬を2000頭輸入しており、以来毎年15-20%の増加率を継続している。輸入馬の流入は国産馬にとっては大きな衝撃であることは間違いない。新疆のイリ馬を例でみると、およその相場は5-6万元/頭であるのに対して、立派な外見を持つ輸入馬を運賃込みでも10万元を超えないものも多い。2015年年初、莱徳馬業が仕入れたNZの馬は凡そこの価格範囲内にあった。このような大きな競争に晒された国産馬は今後どのような対策を講じるべきかは注目の元[ママ]である。

馬主連盟会長はああ言ってるが、将来「競馬くじ」が解禁され「競馬の黄金郷」が実現しちゃったりするやいなや、輸入馬について突然「内国産馬保護のため」とかで強力な規制をかけたりしたりするんぢゃないかとおもったり。また、中国の統計数字は…という話もあるが、2010年の700万頭(前掲「馬産地ニュース」)から200万頭増えてますね。

遊牧民のイリ馬は、別の記事によれば「ここ数年サラブレッド・豪州馬などを導入し」ているようでもある。<改良>されているということだろうが、(純血?)種の保護管理とかはどうなのであろう。

また、レーシングポストがたびたび取り上げ持ち上げている CHC あるいは張祖徳(Teo Ah Khing、テオ・アー・キン)氏(マレーシア籍の建築家らしい)は、中国本土では芳しくない評判もあるようだ。オーストラリアに玉龍牧場を所有する玉龍馬業(YuLong Investments)の張月勝(Zhang Yuesheng)氏(炭鉱や風力発電所を所有しているらしい)もしばしば登場、「初回「中国馬業界の英雄」公募活動結果が明らかに ネット投票221万票を超える(出典:第一競馬網 2017/4/17)」によれば山西玉龍投資集団理事長として「中国10大馬主」部門入り。

同記事には「中国トップ種馬」のリストや、「中国のトップ汗血馬」も二頭だが挙がっている。「汗血馬」の記事も多いのだが、「馬のネットオークション」についての別記事には「ニュージーランド産のサラブレッドが26万元で成約されたほか、ロシア産の汗血馬が211万元の値が付けられた」とあり、やはりアハルテケでしょうね。新疆野馬集団の董事長(理事長)、陳志峰氏は「世界で最も汗血馬の保有頭数の多い馬主」とある。賭け禁止の現状では、サラブレッド以上に人気?(ただし221万元は「成約」していない)。

紹介されてる記事の出典はいろいろだが、直前の記事も第一競馬「網」ということらしいので、どんなものかさらってみた。こちらですね(英語版)。あっと、タイムリー(?)にも、トップにあるニュースが下記である(2017年11月8日付)。

「中国市場アメリカ馬に開かれる—第一競馬網 USDA と中国 AQSIQ *6 との2年間の先行きに気を揉ませるハイレベル交渉を経て、アメリカ馬に中国市場ついに再開。」「再開」とある。第二次大戦前以来とかではないでしょうな。日本は「輸出」が可能になってから10年かかったりしている。そう言えばオーストラリアは香港で儲けてるが、本土の関税は2019年にゼロになるはずである *7

エアフォースワンが中国に向かう途上、米国から馬を輸入しようとする中国人オーナーの検疫要件の協定を結ぶことへの圧力がかかっていた。

トランプ大統領の訪中「28兆円商談」*8 に含まれておったのかー。

過去2年間で、中国のサラブレッド競争市場は有望な成長を示し、世界中の競り場で中国人オーナーの存在を知らしめるるとともに、本国に戻りレースインフラに多大な投資を行なっていた。馬術競技の成長も盛り上がり、中国全土に1,400以上の会員ベースの馬術クラブがある。

これは、馬術も盛り上がってましたか *9 。競馬の方も、ここさいきん特に成長しているということなんでしょう。

輸入プロトコルを導入することで、アメリカ馬は再び中国に歓迎される。馬貿易が全体的な米中関係にどのような影響を与えるかはまだ未確定だが[…]中国人は、真にビジネスを行なうためには友人でなければならないと信じている。すべての障壁が取り除かれた今、馬に対する我々の共通の情熱が、より深い文化的理解、相互の尊敬と繁栄を通じ、両国をどのように結びつけるのかを見てみよう。そして、中国が優れている卓球とは異なり、アメリカの馬産業には提供する多くのものがあるのだ。

(このスローガン的文章いろいろツッコミを入れたくなるのを抑えつつも)アメリカの馬産業は "a lot to bring to the table" なだけに、ということだろうが(優れている)卓球を持ち出すところはなんとも(苦笑)。

(続く)


*1:もともとは生産における存在感のハナシだったのだが、やはり爆買い系などのトピックが中心になってしまった。

*2:イギリス、アイルランドに後れを取っていたという。自由化のレベルなどあるのかもしれないが、後述のように日本も少なくとも2010年から「輸出」。ニュージーランドから莱徳馬業がチャーター便輸入したのは2012年。

*3:その前にメジロアルダンらは寄贈としても、2000年から輸出可能 → 2010年に最初のステップとして輸出って十年の空白があるのだが。関税500パーセントでスタートしたとか?。

*4:国際血統書委員会(ISBC)“INFORMATION BOOKLET 2016”(PDF

*5:当然ながら開催、賞金レベル相応ということだろう。

*6:United States Department of Agriculture’s (USDA’s) Animal and Plant Health Inspection Service (APHIS) :合衆国農務省(USDA)の動植物検疫所(APHIS)と Chinese Administration of Quality Supervision, Inspection and Quarantine (AQSIQ) :中国品質監督検験検疫総局。

*7:前掲「中国は世界の馬産業が注目する元へ オーストラリアは4年後ゼロ関税に(出典:新浪スポーツ 2015/12/23)」。またニュージーランドについては、すでに関税ゼロのようである(2008年。どうも翻訳が?なのだが)。ニュージーランドから輸入を行なっている莱徳馬業については、「同社は2012年8月に初めてチャーター機でNZの馬を輸入し、現在まで合計8回、トータルで644頭を輸入」ともある。「中国の馬主がニュージーランドのセリでトップバイヤーに(出典:大陸競馬網 2015/11/19)」が中国人オーナーの爆買いを報じているが(売り上げ総額の22%)、このセリでトップバイヤーとなったのが同社である。Inner Mongolia Rider Horse Group(内モンゴル莱徳馬業集団)名義でモンゴリアンカーン Mongolian Khan (AUS)(父 Holy Roman Emperor (IRE) 、2015年コーフィールドカップ、オーストラリアダービー、ニュージーランドダービー)を走らせており、オーストラリア、ニュージーランドにおいて競走馬を走らせるオーナーとして大きな存在になっていることが伺える。

*8:一部で「28兆円商談」の内容は、実際にはけっこうショボいとも報じられていた。本件も各輸出国に後れを取っていただけな訳で。少なくともここでは「貿易不均衡は過去の米政権の責任」というのは正しい。

*9:「中国馬産業情報トピックス」の「データが語る中国の馬術産業(出典:第1競馬網 2016/3/16)」では「全国における馬術クラブは823社」としている。「愛好者は13万人」「中国の膨大な人口に対して13万人は過少と言わざるをえまい」。