dancept2の日記

あやしうこそものぐるほしけれ

RaceBets.com:ネット時代の馬券販売と「グローバル化」その三・三/ IFHA パリ会議のセッションのことなど

やはり JRA の海外サイマルキャスト売り上げは注目なのだろう(下記参照)。
ブックあたりが報じてるのだろうが、10月2日第51回 IFHA(国際競馬統括機関連盟)年次総会で「国際戦略:地域市場からグローバル市場への移行(INTERNATIONAL STRATEGY: Transitioning from a local to a global market)」 と題するパネルディスカッションが開かれ、JRA 後藤理事長がパネリストとして「日本のサイマルキャスティング(海外レースへの賭けのための JRA サイマルキャストの開発)(Japanese simulcasting (The development of JRA simulcast for betting on the overseas races ))」と題した講演を行なった模様(約15分)。JRA の位置付けや法整備のはなしなどから説き具体的なノウハウについてはあまり言及が無かったような。出席者にどの程度参考になったのかといえば?な気がするのだが広報にはなったでしょうね。

「第51回国際会議(2017年)」(51st International Conference (2017)

「第51回 IFHA 会議パワーポイント・プレゼンテーション - パート3 」
(51st IFHA Conference PowerPoint Presentations–Part 3)「 IFHA 2017 - オープン・フォーラム - セッション3 - YouTube後藤氏の次に登場したドイツ・トート( German Tote Service- und Beteiligungs GmbH )に出資もしている PMU(フランス場外馬券発売公社)は手広くやってますな。2016年は競馬への全ての賭けのうち既に「輸出」が12%、「輸入」で9%を占めていると(上掲パワポ、スライド38)。なにか下記の数字と内訳が合わない気がするが、PMU については RaceBets.com の方でちょっと触れる(予定)。しかし YouTube ひと月経って再生 115 回と少ない。業界関係者以外で観に行くヤツもそんな居ないか(苦笑)。

なお総会では、ブレグジットの影響についてのセッションも開かれた模様。1960年代からのイギリス、アイルランド、フランスのヨーロッパ競馬三大国による三国協定(TPA)が消えれば、その他の国々も多大な影響を被るというサラブレッドと乗用馬に関しての「痛い話題」。馬の自由な移動も制限されるという訳だ。三国は新たな「システム」を構築する必要があると。


その三で RaceBets が2010年にマルタに移転したことに触れた。話題がそれたり当方が浦島なこともあってなかなか進まないのだが

関連して、その二年後、2012年にレーシングポストが以下のような記事を掲載していた模様なので、こちらにもちょっと寄り道。一連のエントリでお世話になっているジャパン・スタッドブック・インターナショナル:JAIRS 「海外競馬ニュース」より。

今さら五年前のハナシではあるが、いろいろとツッコミどころというか考えさせられる内容ではあった。

 ヤコブス氏は、最近制定された法案により、課税を避けるために海外拠点を巧みに利用していたブックメーカーからの収入が増加することを望んでいる。

 しかし、ドイツのパリミューチュエル賭事を通じた賭事を促進するいかなる努力も、場外馬券売り場がドイツ全土で約50ヵ所しかなくインターネット賭事も制限されているために、妨げられている。

「インターネット賭事も制限」されとるんですな(五年前だが)。が、「制限」があるのはまぁ当たり前なのでとくべつな「制限」かとも想像するが、この記事ではそこいら辺の詳細は報じられていない。ドイツのギャンブル事情についてもまったく不案内かつ例えばサッカーくじが主催者側にどの程度の収益をもたらしているのかも存じぬが、そちらの「制限」とはどう違うのであろうか。そういえばヨーロッパでサッカーに次ぐ人気と伝え聞く自転車ロードレースへの賭けはどうなのであろう。こちらも古いのだが、次の記事によればドイツは、「欧州最大の賭事市場の1つとなりうる」なのだそうである。

「場外の少なさ」もどうか。規模はともかく、JRA の WINS だってそんなもんだろう(こちらで数えたら43だった)。

で、RaceBets も、ベッターテインメント社の100パーセント子会社として「海外拠点を巧みに利用」するのに用いられたというところか。その三で触れた通り「同年に」となっていたが、「課税を避けるため」マルタに移転したところをそうはいかんとばかりに German Racing が出資したことも考えられるが、40%とはいえ出資後みすみす移転させてたりしたとすると結構マヌケである。利益相反するがトータルで得と見たか。「バーデンバーデン競馬場の復興の立役者」ヤコブス氏は、「最近制定された法案」で、こうしたブックメーカーからの収入増に期待する。ところがその三か月後(ここでの「新しい法律」というのがヤコブス氏が期待していた法案とは限らないが)、2012年11月8日付けの記事が下記なのである *1

(続く)


*1:追記:「国内のスポーツ賭事への賭金に5%課税するドイツの新しい法律の導入」を受けての動きではあるが、「特例扱い」を求めていた、しかも業界を揺るがした(?)ベットフェア社の「エクスチェンジ賭事」についてなので、本件とはまた別の見立ても必要なことがわかった。ベッティングエクスチェンジ(betting exchange)またはベットエクスチェンジ(bet exchange)についてもあとでちょっと触れる(予)。